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タートルズSS 「Blue In Red」 (ラフ×にょれお) 

 ラフが、好き。

 そう思い始めたのは、いつ頃からだったかな…。

 …うん、たぶん、…あの時からだと思う。


 その日、私は台所で、みんなの昼食を作っていた。
 フライパンを返して、スクランブルエッグを手早く皿に乗せていく。
 そうしている内に、ピザが焼き上がる。私はオーブンから焼きたてのピザを取り出して、大皿の上に乗せた。すると、
「一つ貰うぜ。」
 そう言って、ラフが私の真後ろから手を伸ばし、ピザを一切れ掠め取っていく。
「あっ…、こら、ラフ! つまみ食いしたらダメでしょう!」
「しょうがねぇだろ、腹減ったんだから。」
 私が怒ったときには、もうピザはラフの口の中に消えていた。そのまま彼は、台所から出て行く。
「もう…。」
 呆れた顔で、私はラフの後姿を見送る。だけど、…何故か、体が熱くなっている。
 さっき、ラフがピザを取っていったとき、…彼は、私を後ろから抱きしめるみたいに、腕を伸ばしてきた。そのせいで、私はラフとの体格の差を、改めて実感してしまった。
(ラフったら…、いつの間に、あんなに体が大きくなったのかしら…。)
 それまでは、弟、としてしか見てなかった。でも、彼は知らない間に私の背丈を追い越し、私を、その腕ですっぽりと包み込めるぐらいに、逞しくなっていた。
「……。」
 思わず、私は自分で自分の体を抱きしめる。どうしよう、何か、ドキドキしてきちゃった…!
「ねーレオちゃーん、ご飯まだー?」
 聞こえてきたマイキーの声で、私ははっと我に返る。
「あっ…、ご、ごめんねマイキー。今行くから!」
 慌てて、私はスクランブルエッグのお皿と、一切れ減ったピザのお皿を、テーブルに運んでいった。


 どんなに考えても、あの時しか思い浮かばない。
 あれ以来、私はラフのことが気になって気になって、仕方なくなってしまった。
 きっかけは些細なことだけど、今、私の中の赤の比率、つまりラフの存在は、日を追うごとに大きくなっている。
 一度そうやって意識してしまうと、もう止まらない。それからというもの、私はなるべくラフを避けるように、日々を過ごしていた。
(だって…、まともに顔が見られないんだもの…。)
 いたたまれなくて、今、こうして、真夜中に一人抜け出して、適当なビルの屋上で、考え事をしている。
 夜風が、背中に垂らしたバンダナをなびかせる。眼下に広がる街の灯りが、少し滲んで見えた。
(ラフ…。)
 名前を呼ぶたびに、胸の奥がきゅっと締め付けられる。切なくて、苦しくて、それでも想うことを止められなくて。
「…うっ、ぁ…!」
 自然に溢れ出した涙が、頬を伝い、足元へと落ちる。目の前の手すりに顔を伏せ、力の限りにそれを握り締める。
「レオ。」
「っ!?」
 突然、背後から掛かった声に、私は驚いて息を呑む。泣いていたのを悟られたくなくて、私は急いで涙を拭って、ゆっくりと振り向いた。
「ラフ…。」
 一番逢いたくて、逢いたくなかった人が、そこにいた。向けられた視線に、どうしようもなく胸が高鳴る。だけど、私はそれを覚られまいと、努めて平静を装った。
「…ど、どうしたの? こんな夜中に…。」
「どうしたの、じゃねぇよ。お前、最近おかしいぞ。」
「…な、何の話?」
 頬を伝う汗を見られないように、私は顔の向きを変える。
「とぼけんな。何で俺を避ける? 俺、お前に何かしたか?」
「……。」
 何でって…、そんなの、言えるわけないじゃない…。
「なあ、答えてくれよ。もし、俺が無意識に、お前のこと傷つけちまったっていうんなら、謝るから…。」
「ラフ…。」
 そこまで、私のことを…?
 少しだけ俯いて、私はふっと顔を上げて、…数瞬のためらいの後に、彼のほうに足を進める。
「…ラフ、ごめんなさい。その話は、また後にしましょう。」
「おい、レオ…?」
 彼の横をすり抜け、私は背中の鞘から刀を引き抜く。
「…お客さん、みたいだから。」
「!?」
 私の言葉でようやく分かったのか、ラフも後ろを振り向く。私たちを取り巻くように、何人もの黒ずくめのやつらが蠢いていた。
「…ちっ、フットソルジャーか。」
 腰のサイを引き抜いて、ラフも戦闘態勢に入る。彼と背中合わせになりながら、私は低く呟いた。
「無粋な人たちね。一体、どこで見つけたのかしら?」
 目の前の、鎖を振り回す奴をじっと見据えながら、ラフも言葉を漏らす。
「何でもいい。話の邪魔をした落とし前は、付けてもらう。」
 期せずして、私たちはほぼ同時に上に飛び上がる。先ほどまで私たちがいた場所を、奴らの鎖が抉っていった。
「ふっ!」
 ラフはそのまま、目の前にいた一人を蹴り倒す。私も着地して、打ち込まれてきた刀を受け止める。
 深夜の戦いは、徐々にその場所を移していき、私たちはとうとう、海沿いの大きな倉庫の上まで来ていた。
 だいぶ数は減ったけど、彼らはまだまだいる。一瞬たりとも気が抜けない。
「んっ…!」
 左腕に巻きついた鎖を、刀で切って落とす。その時、彼らが思わぬ行動に出た。
 一人が、懐から取り出した何かを、私たちの足元に向かって投げてくる。その表面に刻まれた数字で、私はそれが爆弾だと分かった。
「ラフっ!!」
 慌てて刀をしまい、屋根の上からフットソルジャーの一人を蹴落としたラフに、飛びかかるように抱きつく。

 爆弾が爆発したのは、その直後。

 私たちは、逃げることもままならず、爆風に呑まれ、瓦礫と一緒に地面に落下した。


「うっ…!」
 一瞬、気を失っていたみたい。うっすらと目を開けると、ラフの顔が至近距離にあって、思わず息を呑んだ。
「レオ、大丈夫か…?」
「……う、うん…。」
 最初は驚いたけど、ラフの私を見つめる目は真剣そのもの。私は限られた中で、出来るだけ辺りを見回した。
「くそっ、瓦礫の下に埋まっちまったみてぇだ…。」
 ラフが毒づく。確かにその通りみたいだけど…。
「…って、ラフ! ケガしてるじゃない!」
 見ると、彼は左腕に傷を負っていた。それをちらりと見て、ラフは小さく呟く。
「瓦礫で切っただけだ。心配いらねぇよ。大した傷じゃねぇ。」
「そう…。」
 ほっと息を付くと、私は次に、私たちが置かれている今の状況が気になった。ラフが、横たわる私の上に、覆い被さっている…。
「……!」
 それを認識して、私は顔が真っ赤になる。でも、こんな状況で、「離れて」とも言えないし…!
「…レオ。」
 考えに沈んでいた私は、唐突にラフに声を掛けられて、びくっと体を震わせた。
「な、何…?」
「お前は、怪我してねぇか?」
「…えっ?」
 言われて、私は自分の体を確認してみる。落下したときの衝撃はあったけど、それ以外に痛む箇所はないみたい。
「…ん、大丈夫。ありがと、ラフ。」
「ならいいんだが…。」
 ほっとしたような表情を浮かべるラフ。…私の体を心配してくれたという事実が、どうしようもなく嬉しい。周りが暗くて良かった。たぶん私の顔、真っ赤になってる…。
「それで…、さっきの話の、続きなんだけどよ…。」
「っ…!」
 来た、と思った。思えば、その話をしてる最中に、フットソルジャーの襲撃を受けたのだから。
(でも、どう言えばいい…!?)
 ラフと視線が合わせられず、私は横を向いて唇を噛み締める。と、そんな私の頬に、ラフの指が触れた。
「あ…。」
 自然と、私はラフの顔を見ていた。顔の横から垂れ下がる、バンダナの赤。暗闇でもよく分かる、彼の色。
「レオ…。」
 小さく名前を呼んで、彼は話の先を促す。…アクシデントがあったとはいえ、ここには二人きり。言うなら、今しか…!
「…っ、ラフ、実はねっ…!」
 涙すら浮かべながら、決死の覚悟で囁いた言葉は、瓦礫の落ちる大きな音で中断された。
「レオナルド! ラファエロ! 大丈夫!?」
 埋まっていた私たちを助けに来てくれたのは、他でもない、ドナテロと、ミケランジェロだった。
「シェルセルの信号を追ってきたんだ。二人ともケガはない?」
「…うん。ありがとう、二人とも。」
 順番に瓦礫の下から救い出されて、私とラフはバトルシェルに乗り込む。
 車の中で、私はラフの左腕の傷に包帯を巻いていた。そんな私の顔を見て、ラフが困ったように笑う。
「…そんな、泣きそうな顔してんじゃねぇよ。」
「…え?」
 どうやら、私は無意識のうちに、涙目になっていたみたい。軽く頭を振って、私は彼に笑顔を向けた。
「私なら、大丈夫よ。…ありがとう。」
 それきり、私たちは黙ってしまう。結局、話の続きは出来ないまま、バトルシェルは我が家に向かって夜の道を走り続けた。


 あれから三日。ドナテロも、ミケランジェロも、この間のことについては、触れてこなかった。
 …ラフも、普通に挨拶もするし、話もしたけど、…あの事については、一切口を開かなかった。
(せっかく、言おうとしたのに…。)
 一度折れた気持ちは、なかなか先に進み出せない。行き場のない思いを抱えたまま、私はそれでも、毎日修行を欠かさなかった。
(ラフ…。)
 言ってしまえば楽になれる。だけど、勇気が出ない。考えた末、私はある人の顔を思い浮かべた。
(彼女に相談してみよう。きっと、話を聞いてくれるはず…!)
 そう決めた私は、夜の修練の後、先生が自室に引き取り、ラフがシャワーを浴びに行ったのを見計らって、そっと我が家から抜け出した。
 この前と同じように、静かに夜のニューヨークを駆け抜ける。目指す場所に着くと、二階に明かりが灯っている。よかった、まだ起きてるみたい…。
 裏口から入って、木製の扉をノックする。出てきたのは、突然の来訪に少し驚いた顔。
「レオナルド…! どうしたの、こんな夜中に…。」
「エイプリル…!」
 彼女の顔を見た瞬間、私は気が抜けたのか、エイプリルにすがりついてしまう。
「わたし…、もう、どうしたらいいか分からないの…!」
「…落ち着いて、レオナルド。さ、入って…。」
 子供のように泣きじゃくる私を、エイプリルは優しく迎え入れてくれた。
 ソファーに座った私の前に、温めたミルクの入ったカップが置かれる。
「飲んで。落ち着くわよ。」
「…ありがとう。」
 お礼を言って、私はマグカップを両手で持ち、ゆっくりと口に運ぶ。少しシロップが入れてあって、甘くて美味しかった。
「…それで? 何を悩んでいるのかしら?」
「うん…。」
 やっと、話が出来る。私はエイプリルに、今胸のうちを悩ませている全てを話した。ラフを、弟ではなく、男性として見てしまっていること、ラフが大好きになっちゃって、それを伝えられないどころか、顔を見ることすら出来なくて、彼を避けて…。そして、先日のトラブルのことも、包み隠さずに。
「私のせいで、ラフがケガをしたの…。それも、申し訳なくて…。」
「…それは、あなたのせいじゃないわ、レオナルド。フット団のせいじゃない?」
「でも…!」
 結果的に、ラフは私を庇うような体勢になり、それでケガをした。彼が傷つくのは見たくない。だったら、私自身が傷ついた方がいい。
 また涙が溢れ出す。両手で顔を覆った私を、優しくエイプリルが抱きしめてくれる。
 泣き疲れて私が落ち着くと、それを見計らったように、彼女は口を開いた。
「…レオナルド。取り合えず、あなたが今抱いている思いを、正直に伝えてみたらどうかしら。」
「……えっ?」
 顔を上げると、エイプリルは笑って、窓の外を指差す。
「ちょうど、お迎えも来たみたいだし、ね。」
「あ……。」
 窓の外にある非常階段。いつの間にかそこにラフが立っていて、じっとこちらを見つめていた。
(ラフ…!)
 高鳴った胸を押さえると、エイプリルが私の背中をそっと押してくれる。
「…頑張って。」
「…うん。ありがとう。」
 涙を拭いて、私は彼女に明るい笑顔を見せた。

 大丈夫。今ならきっと、伝えられる。


「この間の話の続きが、やっと出来るんだな。」
「……うん。」
 エイプリルの住むアパートの屋上に、私とラフはいた。
 今、彼は私に背を向けていて、その表情を窺い知ることは出来ない。夜風にたなびくバンダナの赤が、やけに眩しく見える。
 と、彼が急にこちらを向く。両腕を胸の前で組んで、真剣な目で、私を見据えてくる。
「…それで?」
 短い言葉で促され、私は俯き、両手を固く握り締める。私は何度か深呼吸を繰り返し、改めて体内に空気を送り込む。彼への想いを伝えるために。
「…まず、この頃、ラフを避けてた理由だけどね。」
「…あぁ。」
「…あれはね、ラフが悪いんじゃないの。全部、私が悪いの。」
 私の言葉に、思わずラフは眉をひそめる。
「…どういう事だ?」
「うん…。……私がね、ラフのこと、……好きに、なっちゃったから、なの。」
「なっ……!?」
 言った。とうとう言っちゃった。さっきあれだけ泣いたはずなのに、また涙が溢れてくる。きっと、この胸の痛いのが、全部涙に変わってるんだ。
「ラフのこと、弟じゃなくてね、…一人の、男性として、好きになっちゃったの…。」
 …あは、ラフ、固まっちゃった。当たり前よね、驚いたよね…。
 私は流れ落ちる涙を拭って、無理に笑顔を作る。
「…ごめんね、ラフ。おかしいよね、私、…あなたの、お姉さんなのにね…。」
 彼の顔を見ていられなくて、私はくるりと後ろを向く。
「…私、またジャングルに行く。あなたのことを諦められるまで、戻らないつもり。だから、それまでは…。」

 …ラフのこと、好きでいさせてね。

 涙声で呟いて、私は前に一歩踏み出す。ジャングルに行くと言ったのは、離れていれば諦められると、そう思ったから。なのに。
「…待てよ!」
「っ!」
 不意に後ろから抱きしめられて、私は思わず足を止める。…あの時と同じ、大きなラフの体が、私を包み込んだ。
「…あれ以来、俺、何でか、…レオを見ると、落ち着かなくなってた。理由が分からなかったんだが…、今、はっきりと分かった。俺はきっと、お前に惚れてたんだ…。」
 ぐっと力を込めて抱かれて、私は指先すら動かせなくなる。首元に感じるラフの吐息が、ひどく熱かった。
「…レオも、俺を想ってくれてるんだろう?」
「……。」
 言葉が出てこなくて、私はこくりと頷く。と、ラフはさらに強く、私を抱きしめてきた。
「だったら、ここにいろ。どこにも行くんじゃねぇ。…俺の、腕の中にいろ!」
 最後は、ほとんど叫ぶような声で、ラフが自分の思いを迸らせる。その真っ直ぐな言葉が胸を打って、私は、…また、泣き出してしまった。
「…いっ、いいの? 私、ここにいて、…ラフを大好きなままでいて、いいの?」
「当たり前だ!」
 ラフの腕が緩んだ。体を動かせるようになった私は、彼に向き直り、その大きな胸に飛び込んでいった。
「ラフっ…!」
 優しく背中に回された腕が、心地いい。私は目の前にあったラフのバンダナを、そっと手の中に握りこんだ。
「レオ…。」
 ラフの顔が、だんだん近づいてくる。私は目を閉じて、それを受け入れる。

 …今、私の胸の中が、目を閉じても消えないくらいに、赤く、染め上げられた。


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