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銀鉄SS 「From the bottom of my heart」 (ブルース×学、現代パラレル3) 

「寒ぃな…。」
夕飯の材料を両手にぶら下げて、俺は呟いた。風は冷たく、耳たぶと鼻の先の感覚がなくなってくる。
早いとこ、部屋に帰って温まりたい。そう思い、俺は少し足を早めた。
やっと自分の部屋にたどり着く。荷物を足元に置き、かじかむ手でコートのポケットから鍵を取り出す。
ふと、隣の部屋を見てみる。まだ室内の電気はついておらず、人がいるような気配もない。
どうやら、隣の部屋の住人、有紀学は、まだ帰ってきていないようだった。
「…ま、いずれ来るだろ。」
それよりも、今は一刻も早く、この冷え切った体を温めたい…。俺は大急ぎで部屋に入り、こたつのスイッチを入れた。
冷たい体を潜り込ませ、しばらく震えていると、こたつが段々暖まってくる。布団の中で手を擦り合わせていると、徐々に指先の感覚が戻ってきた。
「はぁ…。」
ある程度温まったところで、名残惜しいがこたつから離れる。今日はあんまり寒いので、鍋にしようと材料を買って来たのだ。
学が来るだろうと思って、量は二人分である。土鍋に野菜や魚、鶏だんごをたっぷり入れて、寄せ鍋のスープを入れ、煮込む。締めはうどんにするつもりだ。
コンロで鍋を煮込んでいる間に、俺はカセットコンロの準備をする。こたつの上で、熱々の状態で食べたいからだ。
その準備が整ったところで、マンションの廊下をぱたぱたと走ってくる音がする。来たかな…?
「うわー、寒い! ブルース、ただいまー!」
「…来やがったな。」
苦笑を漏らし、俺は玄関のほうに向き直る。大騒ぎをしながら部屋に入ってきたのは、やっぱり学だった。
「毎日寒いなー、…いい匂いですね、ブルース! もしかして鍋ですか!?」
「…もしかしなくても、鍋だよ。」
「やったー! 俺の分もありますよね!」
「二人分だから、安心しろ。」
「ありがとうございます!」
早くもこたつへ入っている学の前に、取り皿と箸を置く。土鍋の蓋を取ってみると、いい感じに煮えてきたみたいだ。もう少しか…。
「まだですかー?」
「もうちょっとだな。おい学、そっちのコンロに火つけてくれ。その辺にライターか何かあるだろ。」
「あ、はーい!」
学がコンロに火をつけたのを見て、俺は両手にミトンをはめ、土鍋を台所からこたつの上に移した。菜箸とお玉を取りに行くと、
鍋の蓋に触った学が、小さく悲鳴を上げた。
「熱っ!」
「…素手で鍋に触る奴があるか。」
呆れたように言う俺を無視し、学は顔をしかめ、右の手をぶんぶんと振っている。どうやら火傷はしていないようだが…。
「大体お前は、気が早すぎるんだよ。まだだって言っただろう?」
「だって、お腹ぺこぺこなんですよー。」
「そりゃあ俺だって同じだ。」
この、せっかちな所さえなければな…。そんな事を思いつつ、俺はちゃんとミトンをはめた手で、土鍋の蓋を開けた。温かな湯気が、こたつの上に立ち上る。
「…よし、食べごろだな。」
「わー! いただきまーす!!」
お皿に適当によそってやると、学は大喜びで箸を手に取る。その様子を見て、俺は改めてクギを刺すことにした。
「この間みてぇに、火傷すんなよ?」
「わかってますよー。」
さすがにもう懲りたらしく、学は箸でつまんだ鶏だんごを、念入りに息で冷ましてから口に入れた。
「おいしいです!」
「…良かったな。」
目の前の、屈託のない学の笑顔。体も心も温まる、そんな食事だった。


「ごちそう様でした!」
締めのうどんを食べつくし、スープも一滴残さず飲み干し、やっと学が箸を置いた。
「よく食ったなぁ…。」
「ブルースの料理って、すごく美味しいんですよ…。」
そこまで言いかけて、なぜか学は言葉を止め、考え込むような顔になる。
「…いや、違うな。ブルースと一緒に食べるから、すごく美味しいんだ。」
「…嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。」
学の言葉に苦笑しながら、俺は洗い物を片付ける。今日はいつもより量が少ないから、少しは楽だ。
「あ、そうだ。ブルースにプレゼントを持ってきたんですよ。」
「プレゼント?」
洗い物を終え、こたつに戻ってきた俺に、学がかばんの中から小さな箱を取り出した。
「何だこれ?」
「何って…、チョコレートじゃないですか。今日はバレンタインデーですよ?」
「……。」
俺は無言のまま、壁に掛けてあるカレンダーに視線を向ける。今日は二月十四日、確かに…。
「…なるほど。」
箱の中には、チョコレートケーキが一切れ。スポンジもクリームも、チョコレート風味のものだった。
「本当は、イチゴのショートケーキにしようかと思ったんですけど、やっぱりバレンタインですから…。」
「…ありがとう、学。」
学は照れている。釣られて俺も照れてしまう。たぶん二人とも顔が真っ赤なんだろうな、と思う。
「はい、ブルース。」
学は丁寧にも、台所からフォークを持ってきて、俺に手渡してきた。それを受け取り、俺はケーキの最初の一口を頬張った。
「…どうですか?」
「美味い。」
即答する俺に、学が心底ほっとしたような顔になる。
「良かった。喜んでもらえて…。」
安心して大きく息を吐き出す学に、俺はケーキの二口目をすくったフォークを差し出す。
「食べていいんですか!?」
「…二人で食ったほうが美味いだろ。」
「はいっ!」
ケーキを食べ、にこにこ笑顔の学。三口目は、さっきよりも更に美味しく感じた。


「…俺、ブルースが好きです。めちゃくちゃ好きです。心の底から好きです…。」
「……俺も、お前が好きだよ、学…。」
視線を合わせると、二人の顔の距離が縮まる。唇を重ね、俺は学を思い切り抱きしめた。

今日だけは、二人一緒のベッドで寝ても、許される。
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