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銀鉄SS 「Wonderful Days」 (ブルース×学、現代パラレル2) 


「海が見たいです。」
そんなあいつの言葉に従い、俺は貴重な休日を使い、海に向かって車を走らせている。
「……。」
俺は無言のまま、助手席でぐっすり眠りこけている人物に視線を走らせた。
有紀学。言わずとしれた、俺の隣の部屋の住人である。
「うーん…。」
寝返りを打ったつもりか、学は幸せそうな寝顔をこちらに向ける。
こいつは今朝、慣れない早起きでふらふらな俺とは対照的に、てきぱきと準備を済ませ、出発してからも騒ぎまくり、俺に注意をされ…。
今、はしゃぎ疲れたのか、完全に熟睡している。
不思議でならない。この元気はどこから出てくるんだ?
「…ん?」
そんな事を思っていると、学が目を覚ましたらしい。
「あれ…? ブルース、海着きました?」
「…まだだよ。もうちょい寝てろ。」
「はーい。」
返事はしたものの、学の目はすっかり覚めているようだ。大きく息を吐き出す音が聞こえる。
ほどなく、赤信号に捕まって、俺は車を停める。横から視線を感じるのは、学がなぜか俺を見つめているからだ。
「…どうした?」
堪りかねて聞いてみると、学は慌てて目を反らし、少し照れたような笑みを浮かべた。
「…何でもないですよ。」
今の言葉、どう考えても語尾に「♪」が付いている。何なんだ一体。
「…変な奴だな。」
アクセルを踏み込み、車を走らせる。窓を開け、外の景色を見始めた学に分からないように、俺はこっそりとため息をついた。

やがて、あたりに潮の香りが漂い始める。車を走らせ続けると、左手に陽の光を受けてきらきらと輝く水面が見えてきた。
「わぁ…! ブルース、海ですよ!」
「…見りゃ分かる。」
素っ気無い俺の反応に、学は困ったような顔になった。
「そんなー。せっかく海に来たんだから、楽しみましょうよー。」
そうは言ってもなぁ…。運転だって、結構疲れるんだぞ。
海水浴客のための駐車場に車を停める。すでにへとへとの俺を尻目に、学は嬉々として海に向かっていく。
「ブルース! 置いてっちゃいますよー!」
わかったから、その高いテンションをどうにかしろ。そんなに急がなくたって、海は逃げねぇ。
ブロックの石段を下りると、すぐに砂浜だ。俺はその石段の下のほうに腰掛け、波と追いかけっこをしている学を見ていた。
「子供か、あいつは…。」
頬杖をつき、俺は空を眺める。良い天気で風もなく、暖かい日和なのだが、俺たちの周りには人の姿は見えない。
当たり前だ。誰が好き好んで冬の海なんぞに遊びに来るか。いるとすれば、よっぽど海が好きか、
もしくは、現在俺の目の前で、靴も靴下も脱ぎ捨て、ズボンの裾をまくり上げ、素足を海の水にひたしている、あいつくらいの物だろう。
「うひゃー、やっぱりちょっと冷たいなー。」
「…風邪引くぞ、学。」
「大丈夫ですよ!」
学がすくい上げ、宙に放り投げた海水が、太陽の光を浴びて輝く。
「だって、もし風邪引いても、ブルースが看病してくれるでしょう?」
「…嫌だね。俺に伝染ったらどうすんだ。」
「そしたら、俺が看病しますよ。」
そう言って、学は再び水を投げ上げて遊び始めた。
まあ、そういう事になるだろうな、と俺は思う。学が病気になれば、必然的に俺が看病を引き受けることになる。
分かってるんなら、心配はいらねぇな。気が済むまで遊んでていいぞ。看病なら任せろ。
さすがにそこまでは口に出さずに、俺は遊び続ける学を見つめていた。

「お腹空きましたね。」
学がそう言ってきたときには、すでに太陽は中天よりも少し西に移動していた。
「そうだな、何か食うか。」
「はい!」
特に昼飯の用意はしてこなかったのだが、どこかに飯が食える場所はあるだろうか…。
辺りを見渡すと、幸いにも道を隔てて少しいった場所に、コンビニがあるのを見つけた。
「あそこでいいか。」
「そうですね。」
足についた砂をぱたぱたと払い、学は俺と並んで歩き出す。さすがに疲れたのか、来たときよりは大人しくなっている。
コンビニで食べるものを買い込み、俺たちは元の場所へ戻る。さっきまで俺一人が座っていた石段に、今度は二人並んで腰掛ける形になった。
「はい、ブルース。」
「ああ。」
学からおにぎりを受け取り、食べ始める。学は早くもサンドイッチをぱくついている。
部屋で食べる食事も美味いが、こういった場所で食べるとまた格別である。
「美味しいですね、ブルース!」
「そうだな。」
おにぎりを飲み下し、紙パックのイチゴオーレの封を開ける。と、それを見た学が口を開いた。
「ブルースって、本当にそれ好きですよねぇ…。」
「…まぁな。」
「冷蔵庫の中にも、いつも入ってますもんね。」
…待て。どうしてお前が家の冷蔵庫事情を知ってる? いつの間に見たんだ?
そんな俺の疑問をよそに、学は二つめのサンドイッチを口に運ぶ。心底嬉しそうな笑顔を浮かべながら。
「なあ、学。俺なんかと一緒に来て、楽しいのか?」
「え?」
口内のサンドイッチを飲み込み、学が驚いたような顔でこちらを見る。
「一緒に遊ぶわけでもねぇし…、つまんなくないのか?」
「えっ…、えっと…。」
「そもそも、何で俺を誘った?」
そこまで聞くと、さすがの学も黙ってしまう。俺が足元の袋から二つめのおにぎりを取り出すと、
学はそれを見計らったかのように、とんでもない事を言い出した。
「…ブルースと、デートしたかったから、じゃあ、ダメですか…?」
意外といえば意外な一言に、俺の手からおにぎりがこぼれ落ちる。それを学が慌てて拾い上げた。
「ああっ! もったいないですよー!」
学の声も、今の俺には届かなかった。
…デートか。そうか、これはデートだったんだ。
「……くっ…、ははは…!」
思わず笑いが漏れる。そうだ、別に難しく考える必要はなかったんだ。
大切なのはただ一つ。一緒の時間を共有すること。それだけで、きっと素晴らしい毎日になる。
そうだったな、学。
「あの、ブルース?」
いきなり笑い出した俺にびっくりしたのか、学はおろおろしながらこちらを見ていた。
そんな学の顔に手を添え、俺は開きかけていた唇を自分のそれで塞いだ。
「んっ…!」
長いような、短いようなキスの後、俺は学の体をしっかりと抱きしめ、耳元で囁いた。
「学…、俺、お前が好きだ。」
「ブルース…!」
抱きしめられたときのままで静止していた学の腕が、俺の背中に回される。ぎゅっと力がこもったその強さに、俺は学からの想いの深さを感じた。
「…どれだけ、その言葉を聞きたかったか…。」
涙すら滲ませながら、学が呟く。
「ずっと、我慢してたのか?」
「はい…。もし告白して、ブルースに嫌われたら、どうしようって思って…。」
「嫌いになるわけねぇだろ…。」
後頭部に手を回し、引き寄せると、学の目に溜まっていた涙が頬を滑り落ちる。
「ブルースっ…! 俺も、ずっと前から、ブルースが好きでした…!」
「…そうか、ありがとう。」
潮が満ちてきたのか、波音が高くなってきた。溢れんばかりの日差しを浴びながら、俺たちはもう一度口付けを交わした。
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