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銀鉄SS 「あいつの寝顔」 (ブルース×学、現代パラレル) 

冬に備えて、炬燵を買った。
それを話したら、案の定あいつは俺の部屋に押しかけてきた。
「あー…、あったかいですー…。」
今、俺の炬燵に入り込んで蕩けているヤツがそうだ。
有紀学。俺の隣の部屋の住人である。
「いいですよねぇ、炬燵。冬はやっぱりコレですよねー。」
そう言いながら、学は炬燵の上のみかんに手を伸ばす。これも夕方、俺がスーパーに寄って買ってきて、きちんとカゴに盛って置いておいたものなのに。
何故お前が先に食う。
「おい、あんまり食うなよ。」
「えー、何でですかー?」
「…俺がまだ食ってねぇんだ。」
ため息混じりに言うと、俺は手元に視線を落とす。台所のコンロを占領しているのは、水を加えて火に掛ければ出来上がる、レトルトの鍋焼きうどんだ。
数は二つ。もちろん、俺と学の分である。
菜ばしで少し混ぜると、アルミで出来た容器の縁のほうから、ふつふつと沸騰してきているのがわかる。
うどんが柔らかく煮えたのを見て、俺は火を消し、容器をコンロから下ろした。
「ほら、出来たぞ。」
トレーに乗せたうどんを、割り箸を添えて学の前に置いてやると、こいつはぱっと笑顔になり、さも嬉しそうに割り箸を二つに割った。
「いただきまーす!」
「熱いんだから、気をつけて食えよ。」
俺がそう言うまでもなく、学は一番上に乗っているエビ天を口に運び、思い切り顔をしかめた。
「熱っ…!」
「…だから、熱いからって、言ったじゃねーか。」
やっぱり舌を火傷したらしい。が、学はすぐに気を取り直し、今度は大げさなくらいにエビ天を息で冷ましてから、一口かじった。
「美味しいです!」
無邪気な笑顔で言われると、呆れるのを通り越して笑えてくる。そして、こいつと一緒の食事が楽しいと思っていることに、俺は気づかされるのだ。

学の隣の部屋に引っ越してきてから、ずいぶん経つ。
毎日コンビニ弁当じゃ味気なかろうと、一度仕事帰りの学に夕飯を作ってやったことがあった。
それに味を占めたのか、こいつは毎日のように俺の部屋にやってくるようになった。
そして飯を食い、ゆったりと過ごし、挙句の果てに泊まっていく。すぐ隣が自分の部屋だというのに、学は絶対に帰ろうとしない。
「だって、ブルースの部屋って、何か居心地が良いんですよー。」
うるせぇ。ここはお前の部屋じゃねえ。そしてまだみかんを食うか。しかも嬉しそうに。
いつまでたってもにこにこ笑顔を絶やさない学に、俺はこっそりと苦笑を漏らした。

「はー、ご馳走様でしたー。」
汁まできっちり飲み干し、学は満足そうな息を吐き出した。そしてそのまま仰向けに寝転がる。
「おい、食ってすぐ寝ると、体に悪ぃぞ。」
「あー、気持ちよくって、つい…。」
そんな学を尻目に、俺は後片付けに入る。溜まっていた洗い物に取り掛かると、学が声を掛けてきた。
「あの、ブルース。俺…、今、すげぇ幸せです…。」
「…何言ってんだ?」
思わず振り向くと、学は天井に視線を向けたまま話していた。体の芯から温まったのか、ほのかに顔が赤く染まっている。
「ブルースといると、あったかいんですよ…。」
「それはお前、炬燵とうどんのおかげだろ?」
「違いますってー。」
学のセリフを軽く受け流し、俺は洗い物を続ける。水を切った皿を布巾で拭い、俺はちょっと意地悪な質問をしてみた。
「学、メシ作ってくれる彼女とかいないのか?」
「えー? いないですよそんなの…。」
「いないのか? お前だったら、すぐ出来そうなもんだけどな。」
「必要ないですよ…。」
と、学は両腕を組んで頭の下に入れ、枕代わりにした。
「俺、ブルースがいれば、彼女なんていらないです。」
…待て。どういう意味だそれは。
「んー…。」
弱った、反応に困る。少し悩んだあげく、俺は今の学の言葉をスルーすることにした。
まさか本心じゃないだろう。そう思ったのだ。

翌朝出しにいくゴミをまとめ終え、俺は炬燵に戻ってきた。
「おい学、そろそろ帰れ…。」
言いながら学の顔を覗き込むと、学は安らかな寝息を立てて眠っていた。やっぱりというか何というか…。
学は一旦寝てしまうと、朝まで起きることはない。わかっていても、ため息ぐらいは出したい。
「はぁ…。」
仕方なく、俺は近くにあったクッションを、学の頭の下に入れた。途端にこいつは、気持ち良さそうに身じろぎする。
「…んー、ブルース…。」
…こいつ、夢の中でも、俺の部屋にいるのか…?
横に伸ばした学の腕を踏まないように、俺はそっと壁際のベッドまで移動した。
「……。」
ベッドに腰掛け、顔の前で両の手のひらを組む。
いっそ、ここで二人で暮らしちまうか…?
すでに一緒に住んでるようなもんだし、何だかんだ言って、俺も学の事を憎からず想っている。
それでもいいか…。
と、ここまで考えたところで俺は我に返り、頭をぶるぶると振った。
いやいやダメだ。男二人で住むには、このワンルームは狭すぎる。
なら、もっと広い部屋ならいいか…? いや、そういう事じゃないんだ…。
考えているうちにワケが分からなくなってきたが、学の幸せそうな寝顔を見ていると、そんな小さなことで悩む必要などないように思えてくる。
今が幸せなんだから、それでいい。
「そうだな、学。」
返事がないのを確かめて、俺は部屋の電気を消し、ベッドに潜り込んだ。
「おやすみ…。」
暗い部屋の中、二人分の寝息が聞こえ始めたのは、それから間もなくだった。
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