05« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.»07

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリ: スポンサー広告

tb: --    cm: --

銀鉄SS 「遠い日の約束」 (バルジ×学) 


「本当にいいんですか? せっかくの休日なのに、私がお邪魔してしまって…。」
「構わんさ。きっと子供たちも喜ぶ。」
駅からの道のりの最中、私はもう一度有紀隊長に聞いた。
久しぶりの休暇、私は惑星タビトにある有紀隊長の家に、一晩泊まらせていただくことになっていた。
今頃奥様と二人の子供たちは、父親の帰りを心待ちにしているに違いない。一家団欒のところに、私がいてもいいのだろうか…。
「ほら、ここだ。」
有紀隊長が足を止めたのは、「銀河亭」と言う名のラーメン屋の前だった。
「確か、奥様がお店をやってらっしゃるんですよね。」
「そうだ。秀太郎、元気だったか?」
言いながら、有紀隊長は玄関先にいた茶色の犬の頭を撫でた。赤いスカーフがよく似合っている。
「可愛い犬ですね。」
「そうだろう?」
答える有紀隊長の眼差しは、いつもよりもずっと穏やかだ。やはり、故郷はリラックスできるらしい。
引き戸を開けると、有紀隊長の奥様が出迎えてくださった。
「カンナ、ただいま。」
「お帰りなさい。そちらの方は…。」
「ああ、電話でも話したとおり、彼は…。」
有紀隊長が私を紹介しようとした瞬間、勢い良く階段を駆け下りてくる足音で会話が中断してしまった。
「父さんだ! 父さんが帰ってきたよ!!」
飛び出してきたのは、有紀隊長の二人の子供たちだった。喜びながら父親に纏わりつく子供たちを、
有紀隊長はこの上なく優しい目で見つめていた。そこへ、奥様の一喝が飛ぶ。
「護、学! 階段はもっとゆっくり降りなさい!」
「はーい。あれ、このお兄ちゃん誰?」
子供たちは、やっと私の存在に気づいたらしい。少し困りながら、私は子供たちに挨拶をした。
「初めまして、シュワンヘルト・バルジです。有紀隊長…、いや、お父さんには、いつもお世話になってるんだよ。」
「じゃあ、お兄ちゃんも、お父さんと同じビッグワンに乗ってるの!?」
「そうだよ。お父さんと一緒にお仕事してるんだ。」
そう言うと、子供たちは尊敬の視線を私に向けてきた。
「お兄ちゃんすごーい!」
目をきらきらさせる子供たちを私から引き剥がし、有紀隊長が困ったような笑みを浮かべた。
「こら、お前たち。あんまりバルジに迷惑をかけたらいかんぞ。」
「構いませんよ、有紀隊長。可愛いお子さんたちですね。」
本心だった。父親と一緒に働いていると言うだけで、私に全般の信頼を置いてくれるこの子たちが、本当に可愛かった。
私は、店の奥の座敷に通された。一晩お世話になるのだから、今日はたくさんこの子たちと遊んであげよう。そう思っていた。


奥様の心づくしの夕食を頂いた後、私はお風呂に入らせてもらった。
「ふう…。」
体を包む湯の温かさに、私はため息を漏らした。初めて来た筈なのに、妙にリラックスできるのは、恐らく奥様の人柄の温かさと、
子供たちの明るさがこの家に満ちているからに違いない。
体の芯まで温まり、私は風呂から上がった。居間では、久しぶりの団欒を楽しんでいた有紀隊長と奥様、
そしてすでにパジャマに着替えていた子供たちが、私を待ち受けていた。
「すみません、お風呂頂きました。」
タオルで頭を拭きながら言うと、すぐに子供たちが飛びついてくる。
「ねぇねぇお兄ちゃん! 今日は僕のベッドで一緒に寝てくれるよね!」
この子は確か…、弟の学だったかな…。
「君のベッドで、一緒に寝ていいのかい?」
「うん、もちろんだよ! もっとお話聞きたいもん!」
「ありがとう。」
頭を撫でると、学はにっこり笑う。それがまた可愛らしい。
「それでは、有紀隊長。私は先に休ませていただきます。」
「ああ。学、あまり遅くまで起きているなよ。」
「わかってるよ!」
有紀隊長に見送られながら、私は学と手を繋いで二階へと上っていった。
「ほら見て! これが僕たちのベッドだよ。」
子供部屋に連れてこられた私は、最初に部屋の隅にある二段ベッドを見せてもらった。
「上が兄ちゃんで、下が僕。このベッド、父さんが作ったんだ!」
「へえ…!」
素直に感心した。子供たちが成長しても使えるように、大きめに作られた木製のベッド。これを有紀隊長が作ったのか…。
彼の器用な一面を、少し垣間見たような気がした。
ハンガーを借りて、私は隊服のコートを壁に掛ける。それを、学はじっと見つめていた。
「…どうしたんだ?」
「かっこいいなぁ…。」
うっとりと学が呟く。父親と同じシリウス小隊のエンブレムの入った青いコートは、子供たちにとっては憧れの物なのだろう。
「着てみるかい?」
「えっ!? いいの!? やったぁ!!」
はしゃぐ学の肩に、私は自分のコートを掛けてやる。袖を通し、軽くベルトを締めてやると、小さなシリウス小隊の隊員が出来上がった。
「ぶかぶかだ。」
「それは仕方ないだろう…。」
小さい学が着ると、コートの袖も裾もだいぶ余る。それでも、学は見よう見まねで私に敬礼をしてみせた。
「シリウス小隊隊長、有紀学です!」
「おいおい、もう隊長になったのか? かなり早いな…。」
「お兄ちゃんも敬礼して!」
「…あ、そうだな。」
敬礼には敬礼で返すのが礼儀だ。私も学に向かって敬礼をする。
「シュワンヘルト・バルジです。」
「…えへへ、何だか、本当にSDFに入ったみたいだ…。」
照れながら、学はコートを脱いだ。それを受け取り、もう一度ハンガーに掛けて吊るす。
「お兄ちゃん、お話の続きをしてよ!」
いつの間にか、学は兄の護と共に、部屋の中央に座り込んでいた。
「よし、わかった。」
私も床に腰を降ろす。目を輝かせる子供たちに、私はたくさん話をしてあげた。
宇宙海賊と戦ったときのこと、正体不明の生物と遭遇したときのこと、心躍るエピソードの数々。
全て自分の実体験を元に話しているため、話には必ず有紀隊長が出てくる。
初めて聞く父親の活躍に、二人は身を乗り出して聞き入っていた。
「…はぁ、父さんって、やっぱりかっこいいなぁ…。」
「そうだな、君たちのお父さんは、世界で…、いや、宇宙で一番かっこいい人だ。」
私が言うと、子供たちはぱあっと花が咲いたような笑顔を浮かべた。父親を尊敬してやまない子供たち。
しかし、有紀隊長を尊敬する気持ちは、この子たちに負けてはいない。
(…張り合ってどうする…。)
苦笑を浮かべると、部屋の時計が目に入った。そろそろ寝ないといけない時間だ。
「よし、そろそろ寝るとするか。」
「はーい。」
学に促されるままに、私は二段ベッドの下段へと潜り込んだ。私が十分足を伸ばして寝られるくらいのスペースがある。
程なく、上にいる護が電気を消し、部屋は真っ暗になった。
「ねえ、お兄ちゃん…。」
「どうした?」
布団の中で、学が私に擦り寄ってきた。
「あのね、僕ね、大きくなったら、絶対にビッグワンに乗りたいんだ。」
「…それは、シリウス小隊に入りたい、って事かい?」
「うん。」
ふむ…。この子がSDFに入隊できるようになるまで、あと十年くらいか。その頃には、何事も無ければ、私はまだシリウス小隊にいるな…。
「…わかった。学、お前がシリウス小隊に入ってくるのを、私は楽しみに待っているよ。」
「本当!?」
「ああ。約束だ。」
「じゃあ、指切りしよう!」
布団の中で、私たちは小指と小指を絡ませあい、SDFに入った際の再会を誓った。


「ん……。」
閉じていた目を開けると、いつもの風景が目に飛び込んできた。
SDF本部内、シリウス小隊の待機室。まだ任務の始まる時間には早いが、私は少し前からここに座っていた。
「お早うございます。」
ドアを開けて、学が部屋に入ってきた。人のことは言えないが、ずいぶんと早い出勤だ。
「お早う。」
「どうかしたんですか? バルジ隊長…。」
私がこんな早い時間にここにいるのを疑問に思ったのか、学は席には着かず、私の横まで歩いてきた。
「ん、少しな…。昔のことを、思い出していた。」
私は椅子を学のほうに向け、彼の顔を見た。幼い頃の面影が、まだ残っている。
「学、お前は覚えておらんかもしれんが、私は以前、有紀隊長のお誘いを受けて、お前の家に泊まりに行った事がある。」
「ええっ…!?」
やはり驚いた。
「覚えていないのか。私の事を『お兄ちゃん』と呼んで、かなり懐いてくれていたのにな。」
「そうだったんですか…。」
学は必死で、その時の事を思い出しているようだった。
「泊まった日の翌朝、私の足にしがみ付いて『お兄ちゃん行かないでー!』と大泣きしただろう。私は覚えているぞ。」
「あはは……。」
困ったように頭を掻く学。浮かべた笑顔は、あの時と全く変わっていない。
「大きくなったら、絶対にビッグワンに乗りたい。お前はそう言っていた。そして私は、学がシリウス小隊に入ってくるのを楽しみに待っていると言って、指切りをしたんだ。」
右手の小指を立てて見せると、学は照れたように笑う。
「お互いに、約束を守ったな。」
「…はい。」
椅子を蹴って立ち上がる。目の前にある学の体を、私はそっと胸に抱きしめた。
「えっ、隊長…?」
「…あの時の子供が、こんなに大きくなったんだな…。」
私の話に目を輝かせていた子が、今、立派に成長して、私の目の前にいる。そう思うだけで、私の心にじんわりと温かいものが生まれた。
「バルジ隊長、俺、父さんが大好きです。」
私の腕に包まれたまま、学が口を開く。
「…ああ。」
「父さんが乗っていたビッグワンが好きです。シリウス小隊が好きです。そして…。」
有紀隊長から受け継いだ茶色の瞳で、学が私を見つめる。
「…バルジ隊長、あなたが大好きです。」
「…ありがとう、学。」
そっと口付けを交わす私たちを、窓から差し込んできた太陽の光が優しく照らした。


学は、小さい頃の約束を守り、私のところに来てくれた。
そんな学を、私は絶対に離すつもりはない。
スポンサーサイト

カテゴリ: 銀鉄SS

tb: 0   cm: 0

« 銀鉄SS 「そこに、愛する人がいるから」 (ブルース×学)  |  銀鉄SS 「大切に思う」 (バルジ×学) »

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://deepaquaforest.blog106.fc2.com/tb.php/3-c8d911a8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。