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タートルズSS 「恋華 ~Fire Heart~」 (ラファエロ×レオナルド) 

今さら言えない「好き」が、胸の中で燻り続けている。

朝のニュースを見るため、俺はソファーに腰掛け、テレビのスイッチを入れた。
すぐに、天気予報が始まる。いつもこの後にニュースがあるので、俺はそのまま見ていた。
…昨夜も、よく眠れなかった。
原因は分かってる。だけど、…どうしようもない。
リモコンをぐっと握りしめて、胸の内に押し込めた思いが出てくるのを防ぐ。
「ふあ~あ…。」
そうしている内に、その原因が起きてきた。大きなあくびを漏らしながら、階段を降りてくる。
相手の気配を、痛くなるくらい敏感に感じて、体を強ばらせていると、彼は普通に俺に声をかけてきた。
「…よう、レオナルド。早いんだな。」
「…お、おはよう、ラファエロ。」
声の主、ラファエロは、俺の様子に気づかぬまま、ごく普通に俺の隣に腰掛けた。
「はぁ~あ、よっ、と…。」
器用に足を組み、ラファエロはテレビを見やる。画面の中では、女性のキャスターが、昨夜起こったニュースを読み上げていた。
「…ふん、昨夜は、パープル・ドラゴンの奴ら、暴れてねぇみてぇだな。」
ニュースを見ながらラファエロはそう言うが、俺の心臓は体の中で暴れ回っていた。
足が…、もう少しで、触れてしまいそうだ…!
耐えきれず、俺はその場から離れる。ラファエロに「顔を洗ってくる」と言い残し。
「…おう。」
ラファエロの返事を聞き流した俺は、そのまま足早に洗面台の前まで行き、ハチマキを外して、思い切り顔を洗った。
冷たい水は、火照った体を少し冷やしてくれた。濡れた顔のまま、鏡を見つめる。
…自分が何を考えているのか、当の自分が一番分からない。
洗面台の縁を、手が震えるくらい握りしめ、俺は目をつぶった。
伝えるか伝えないか、それすらも決められないまま、ただ、思いだけが募っていった。

それからというもの、俺はラファエロのことが気になって仕方なくなった。
こんな時、同じ家に住んでいるというのは、すごく困る。
嫌でも顔を合わせなければいけないからだ。
今日もそうだった。細い竹の上に立って集中力を養う修行中、ラファエロが近くに来るだけで、俺の心臓は音を立てて高鳴る。
「はっ!」
跳んで移動し、ラファエロから離れても、それは消えない。視界のどこかに、必ずラファエロがいる…。
それに、例え目を閉じて視界を遮ったとしても、俺はラファエロの気配、息づかい、鼓動音まで敏感に感じ取ってしまう。
そのため、今日の修行も、満足した結果が出ず、不本意に終わった。
「精彩を欠くようじゃな、レオナルド。」
「先生…。」
ふがいない俺を見かねたのか、スプリンター先生が声を掛けてきた。
「すみません、実は昨夜、よく眠れていなくて…。」
「それはいかんな。健全な精神は、健全な肉体にこそ宿るものじゃ。何か悩んでいることがあるのなら、ワシに相談しなさい。力になろう。」
「…ありがとうございます、スプリンター先生。」
俺はそう言って頭を下げる。
…お気持ちはありがたいですが、言えません、先生。
俺が、道ならぬ思いを抱いていること、しかもその相手がラファエロだなんて。
とても、言えません…。

だから俺は今夜も、眠れぬ体を持て余している。
ベッドの中で、何度も寝返りを打つ。が、一向に眠気がやってこない。
それどころか、闇の中で研ぎ澄まされた神経は、こんな時にもラファエロの気配を捉えようとする。
(はぁ…。)
観念した俺はベッドから起き上がり、足音を殺してそっと部屋を出る。
そのままラファエロの部屋の前まで行き、中の様子を伺う。壁の間に渡したハンモックの上で、ラファエロはぐっすりと眠っていた。
(……。)
胸が高鳴る。衝動的に伸ばしかけた手をぐっと握りしめ、俺は目を閉じて天を仰いだ。
(こんなことをやって、どうする…!)
俺は頭を振り、足早にその場を離れた。そのために、俺が去ったあと、ラファエロが実は目を覚ましていたことに、俺は気が付かなかった。

ビルの屋上を縫うように走る。一人で、ただ無心に。
空には半分ほどの月。ひんやりとした夜気が、俺の体を包んでくる。
ある程度進んだところで、俺は足を止めた。周りには誰もいない。静まり返ったニューヨークの街の中、動いているのは俺一人のようだった。
足を止めると同時に、行き場のない想いが溢れだし、頬を濡らす。
(あ…。)
拭っても拭っても、それは堰を切ったように溢れてきて、止まらない。仕方なく、俺はそのビルの屋上の片隅に座り込み、涙が流れるに任せた。
気の済むまで泣いたら、この痛みも少し楽になるだろうか…。
「っ…。」
夜明け前の闇の中に、押し殺した俺の泣く声が溶けていった。

それから俺は、ラファエロと二人きりになるのを徹底的に避けるようになった。
ドナテロやミケランジェロ、スプリンター先生が一緒にいるときは平静を装うが、二人きりになりそうになると、そっとその場を離れる。
理由は単純だ。意識しすぎて、どうしようもなくなるからだ。
出来るだけ、ラファエロのことを気にしないように努める。それでも、
「…だってよ。なぁ、レオナルド?」
…名前を呼ばれると、胸の中がかあっと熱くなる。
「ん? ああ…。」
「何だよ、聞いてなかったのか?」
「レオナルド、この頃変だよー? すぐにぼーっとしちゃってさ!」
ラファエロとミケランジェロに口々に言われ、俺は慌ててその場を取り繕った。
「あぁ、ごめん。ちょっと考えごとしててさ…。」
「そーなのー? レオナルドはさ、何でも真剣に考えすぎなんだよ。もっとおいらみたいに楽しくいこうよ!」
「お前は、ただおちゃらけてるだけだろ。」
「何だよー!」
楽しく話している二人を横目に、俺は早くそこから離れたいという衝動に駆られていた。
ラファエロと普通に話せるミケランジェロが羨ましくて、そしてそんなミケランジェロに少なからず嫉妬している自分が情けなくて、…泣きたいような、そんな気分だった。
「はぁ~…、レオ、シャワー空いたよー。」
その時、ドナテロがシャワーを浴びて出てきた。俺にとってはちょうど良かった。ここを離れる口実が出来たから…。
「…あ、ありがとう、ドナテロ。それじゃあ、俺はシャワーを浴びて、もう寝るから…。」
大急ぎでそれだけ言い、足早にその場を離れた。
「…どうしたんだろうねぇ、レオは。」
「ラファエロ、また何か言ったんじゃないのー?」
「うるせぇ! 俺は何もしてねぇ!」
…ごめん、みんな。
胸の内の謝罪。例え届かなくても、言わずにはいられなかった。

シャワーを浴びた後、俺は自分の部屋で、先ほどの自分の行動を思い返してみた。
軽率すぎやしなかったか…? みんな、変に思ってないといいけど…。
ベッドに腰掛けて、頭を抱える。胸に突き刺さる痛みに、自然と顔が歪んでくる。タオルを持ってきてよかった。泣けば、少しは眠れる…。
「おい、レオナルド。」
出し抜けにかかった声に、俺はびくっと体を震わせた。恐る恐る顔を上げると、そこにはラファエロが立っていた。何で、よりによって…!
「レオナルド、お前最近様子がおかしいぞ。何かあったのか?」
俺の気持ちをよそに、ラファエロは部屋の中に入り込んできて、俺の前に立った。
「いや…、別に、何でもない…。」
一方、俺はラファエロと目が合わせられない。立ち上がって後ろを向き、表情を見られないようにする。
「何でもねぇわけねぇだろ!? この頃のお前は絶対おかしい! 変に余所余所しいしよ…。一体どうしちまったんだ!?」
両手を広げて、ラファエロは俺を説得しにかかる。だけど言えない。本当のことを言って、軽蔑されるのが怖い…。
「…だから、何でもないって、言ってるだろ。」
かろうじて平静を装い、俺はそれだけ呟いた。
「…レオナルド、俺にも言えねぇっていうのか!?」
肩を掴まれ、強引に振り向かされる。俺も驚いたが、俺の顔を見たラファエロは、もっと驚いた。
「…お前、泣いて…?」
「っ!」
ラファエロに言われて、俺は初めて自分が涙を流しているのに気づいた。
慌ててそれを手で拭い、ラファエロに背を向ける。
「…悪い、一人にしてくれないか…?」
部屋に沈黙が落ちる。ほどなくして、ラファエロの気配が消えた。崩れるようにベッドに座りこむと、いまだに止まらない涙が手のひらを濡らしていく。
(ラファエロ…、すまない…!)
先ほどと同じように、俺は心の中でラファエロに謝り続けていた。

「スプリンター先生…。」
「ん? どうしたんじゃ、ラファエロ。」
「その…、レオナルドの奴が、最近様子がおかしいんですよ。何か、…また悩んでるようなんで…。」
「…ふむ、わしも気づいておる。確かに、ここ最近のレオナルドは妙じゃのう。」
「水臭ぇじゃないですか! 何か悩んでるんだったら、俺たちに言やぁいいのに、あいつ…!」
「落ち着くのじゃ、ラファエロ。こういったことは、無理に話させようとすると、ますます話しにくくなるものじゃ。」
「じゃあ、どうすれば…!?」
「レオナルドとて、まだ答えが決まっていないのかもしれん。自分から話すようになるまで、待つのじゃ。それに…。」
「それに?」
「…例えわしにも言えないような事でも、ラファエロ、お主になら、言えるのかもしれんぞ。」
「俺に? どうしてそんなことがわかるんです?」
「…勘でちゅ。」

我が家の真ん中で、俺はずっと瞑想を続けていた。
目を閉じ、ゆっくりと呼吸をし、何も考えず、ただ、無心に。
でも、どうしても頭から離れないことが一つ。
(ラファエロ…。)
想う相手の姿が、頭の中に浮かんでは消えていく。戦っているときの真剣な顔、ソファーでリラックスしながら本を読んでいるときの顔、俺に向けてくれる、屈託のない笑顔…。
もし、この想いを伝えることが出来たなら、こんなに心が痛むこともないのだろうか。
「レオナルド。」
声を掛けられ、静かに目を開ける。俺の前にはスプリンター先生が立っていた。
「…はい。何でしょうか。」
返事をすると、先生は俺と向かい合うように座り、深く息を吐いた。
「師匠としてではなく、父として、お前に言っておくことがある。良く聞くのじゃ。」
「はい。」
一拍おいて、先生は話を始めた。
「最近、何か悩んでいるようじゃな。皆も心配しておったぞ。」
「ぁ…。」
いきなり、核心に触れられるとは思わなかった。狼狽えてうつむく俺に、先生は言葉を続けた。
「皆が、お前の事を心から思ってくれておる。あまり心配をかけてはいかん。わかっておるな?」
膝の上で握りしめた手に、さらに力がこもる。耐えきれずに、俺は止めていた息を吐き出した。
「先生…、俺、どうしたらいいのか分かりません…!」
涙がこぼれそうになるのを必死に我慢していると、俺の肩に先生の手が置かれた。大きくて、優しい手だった。
「レオナルド、息子よ。よく聞け。自分の心に嘘はつけん。それがどのようなことであっても、お前にとって真実であれば、貫くのじゃ。」
「先生…。」
「お前がどんな選択をしようと、わしはお前の味方じゃ。もちろん、兄弟たちもな。心の声を聞き、それに従え。レオナルド、お前になら出来るはずじゃ。」
「……!」
自分に嘘をつかず、心の声に従う…。そうか、それでいいんだ。
こんな簡単なことが、自分で自分を抑え付けていたせいで、全然見えていなかった。今、やっと分かった。
俺は立ち上がり、先生に深々と頭を下げた。
「スプリンター先生、ありがとうございます。」
「うむ。その様子だと、答えは出たようじゃな。」
「はい。もう迷いません。」
「それで良い。修行の邪魔をして済まなかったな。瞑想を続けるのじゃ。」
「はい、父上。」
スプリンター先生の後ろ姿を見送り、俺は再び瞑想を始めた。軽くなった心は、今まで悩んでいたのが嘘のように晴れやかだった。
今夜、ラファエロに、自分の想いを伝えよう…!

伝えよう。そう決めたはいいが、なかなかきっかけが掴めない。
夕飯の前も、シャワーの前も、ラファエロに話しかけるチャンスがなかった。今度こそ…。
今、ラファエロはソファーに座りながら、バラエティ番組を見ている。スプリンター先生は部屋に戻ったし、ドナテロは作業中。また何かを作っているみたいだ。ミケランジェロはシャワーを浴びている。…チャンスは、今しかない!
意を決した俺は、ゆっくりとラファエロに近づく。大きく深呼吸をして、俺は口を開いた。
「ラファエロ…。」
「…ん?」
テレビを見ながら笑っていたラファエロだったけど、すぐに俺に気づいてくれた。
「何だ?」
「…話が、あるんだ…。」
それだけ言って、俺はくるりとラファエロに背を向けて歩き出す。とてもここじゃ言えないから、外に連れ出すつもりだった。
「…おい、レオナルド。どこ行くんだ!?」
テレビを消して、ラファエロが追いかけてくる。俺はその気配を背中に痛いほど感じながら、地上へ向かった。

ビルの屋上を渡り歩く。闇に紛れ、人に見つからないように隠れながら。
非常階段を滑り降り、信号機の上に飛び乗り、路地裏に姿を消す。少し広めの隙間でも、俺たちなら楽々飛び越えられる。
ラファエロも、訝しげな顔をしながら、ちゃんと付いてきてくれているようだ。
「おい! どこまで行くんだ?」
ラファエロの問いに答えないでいると、不意に後ろから微かな笑い声が聞こえた。
「…なぁるほど。リーダーに続けのゲームのつもりか? いいぜ、やろうじゃねえか!」
言葉と同時に、ラファエロが俺の前に出る。油断していた俺は、逆にラファエロの背中を追いかける形になった。
「…おい! ずるいぞ!」
何とかラファエロに追いつき、横に並ぶ。しかしラファエロは急に進む方向を変え、俺をまごつかせる。
そのまま走り続けること十数分、少し広めのビルの屋上で、やっとラファエロが足を止めた。肩で息をする俺に対し、ラファエロは余裕の表情だ。
「どうした?」
「…どうした、って、お前が、リーダーに続けのゲームだなんて言うから、つい本気になっちゃっただろ…!」
「そうか?」
「そうだよ…。こんな遠くまで、来るつもりなかったのに…。」
やっと息が整った。すると、それを見計らったかのようにラファエロが口を開く。
「ま、ここまでくりゃあ、少しはお前の気分も解れただろ。話、とやらもしやすいんじゃねぇか?」
「えっ…? …もしかして、わざと…?」
とくん、と胸が高鳴る。話しやすい状況を作ってくれたのか…?
「ああ。何だか、妙に思い詰めたような顔してたからよ。」
事も無げに言ってのけるラファエロ。何気ない優しさに、鼓動がどんどん速くなっていく。ああ、やっぱり俺は、ラファエロが…。
「んで、話って何だ?」
「あ…。」
改めて聞かれると、口ごもってしまう。ダメだ、言わなくちゃ、伝えなくちゃ…! 何のためにここまで来たか、分からなくなる…!

「…あの、俺…。」
ようやく、それだけ言葉を絞り出す。ラファエロはそんな俺を急かすわけでもなく、腰に手をやり、じっと俺を見つめている。
どう言えばいいのか迷い、俺は天を仰ぐ。空には満月が浮かび、優しい光で俺たちを照らしている。
…そうだ、ありのままを伝えればいい。胸の前で右の手をぐっと握り、ラファエロの瞳を見つめ返す。
「…俺、ラファエロが好きだ。」
駆け抜ける風が、俺たちのハチマキをたなびかせる。顔が真っ赤になっているのが分かる。頼む、何か言ってくれ…!
「…それは、家族として、か?」
ラファエロの問いに、俺は首を振った。
「いや、恋人として、だ…。」
言い切って、俺は目を閉じた。反応を見るのが怖い。ラファエロ、お前は今、どんな顔をしてる…?
次の瞬間、俺の耳に聞こえてきたのは、笑い声だった。
(えっ…?)
驚いて目を見開く。ラファエロは…、笑顔を浮かべていた。
「やっと言ったな。」
「やっと、って…!?」
ここにきて、俺は一つの結論に行きあたった。
「まさかラファエロ、知ってて…!?」
戸惑う俺に、ラファエロはさらに笑みを深くして、
「バーカ。俺が気づかないとでも思ってんのか?」
「うっ…!」
今度は羞恥心で顔が赤くなる。ラファエロは全部分かってたんだ。それでいて、知らない振りをしていたんだ…!
「ま、気づいた、っていうよりは、もしかしたらそうなんじゃねえか、って思ってた、って方が近いかもしれねぇな。」
「……。」
ラファエロの独白は続く。俺は両手で高鳴り続ける胸を押さえ、それを聞いていた。
「スプリンター先生に言われた。レオナルドが自分から悩みを打ち明けられるようになるまで待て、ってな。
んで、ぶちまける相手は、たぶん俺だ、とも言ってたな。」
「えっ…!? 先生も、このことを…?」
「勘だ、とは言ってたが、わからねぇぞ。ここ最近のレオナルドは、誰が見てもおかしかったからな。」
それを言われると弱い。俺は恥ずかしくなって俯いてしまった。
「んで、もしかしたら、って思った途端に、今までのお前の行動にやっと納得がいった。…待ってたんだぜ、いつ言ってくんのか。」
「ラファエロ…。」
「…お前が率直に言ってくれたから、俺も今思ってることをそのまんま伝えるぜ。…すっげぇ嬉しい。」
「!?」
少し顔を赤らめながら、ラファエロが笑う。今までに見たこともないような、とても優しい表情で。
「…俺も、お前が好きだぜ、レオナルド。」
「ぁ…!」
受け入れられた嬉しさが身体を貫き、俺の目からとうとう涙がこぼれ出す。唐突に俺が泣き出したので、ラファエロは驚いたようだった。
「お、おい、泣くなよ。泣くなってば。」
「うっ…、ぁ…!」
「ったく、しょうがねぇな…。」
なおも涙を流す俺の肩に、ラファエロの手が置かれる。彼は指先で目じりの涙を拭ってくれた。と、そこで改めて俺たちは顔を見合わせる。
「……。」
「……。」
ラファエロの顔が、いつもより近くにある。夜風になびくハチマキが、肩口にかかっている。
そのまま見つめ合うこと数瞬。ゆっくりと近づいてきたラファエロの顔に、俺は自然に目を閉じた。
あんなに望んでいたラファエロとの口づけは、思っていたのよりもずっと甘く、優しかった。
唇を離すと、すぐにラファエロの腕の中に抱きしめられる。自分よりも頭一つ高い、その温もり。そうだ、これが欲しかったんだ、これに触れたかったんだ…!
「…おい、いい加減泣き止めって。」
「仕方ないだろっ…、止まらないんだから…!」
そう、俺の涙はまだ止まらなかった。ラファエロは天を向いて嘆息し、
「はぁ…。まぁいいや。泣け泣け。どうせここには俺たちしかいねぇんだ。ついでに、まだ言いたいことがあるんなら全部吐き出しちまえ。聞いてやっから。」
「…怖かったんだ。こんな事を言ったら、ラファエロに嫌われるんじゃないか、って…。」
「…うん。で?」
「でも、スプリンター先生に言われた。心の声を聞き、それに従えって。…俺、ラファエロが好きだから、だから…。」
「…それで、やっと言う気になった、ってワケか。」
「ああ…。」
ラファエロが、俺の背中を優しく叩いてくれている。それが妙に心地よくて、俺は子供みたいにラファエロにしがみついてしまった。
「何だか、夢みたいだ…」
「夢じゃねえよ。夢であってたまるかってんだ。」
俺を抱く腕に力がこもり、ぎゅっと強く抱きしめられる。
「…改めて言うぜ。レオナルド、お前が好きだ。絶対離さねぇからな。」
「ああ…!」
ラファエロの言葉に、俺は大きく頷いた。

今、俺の中に燻っていた火は消えた。そのかわりに、火よりも熱い衝動が体を満たしている。
俺は顔を上げてラファエロと視線を合わせ、今度は自分から彼に口付けた。
背中にあった腕を首筋に回し、自分の方へ引き寄せる。
ラファエロも目を閉じ、それに答えてくれた。
口を離すと、彼はにっと笑って、
「もう一回だ。」
請われるままに、俺はラファエロにもう一度口付ける。今度はもっと長く、深く。
名残惜しそうに体ごと離すと、ラファエロは少し真剣な表情になった。
「いいか、レオナルド。この先、またお前が何か悩むようなことがあったら、俺に言えよ。何でもかんでも一人で背負い込むな。ちったあ俺を頼れって。」
「…ああ、約束するよ。」
そう言うと、ラファエロの顔に笑みが戻った。
「頼りにしてるぞ、ラファエロ。」
「ああ、任せろ。」
満月の光が満ちるビルの屋上で、俺たちはハイタッチを交わし、互いの手を固く握りあった。

そう、この温もりと揺るぎない想い。
それさえあれば、俺たちは誰にも負けやしない。


もう一つのラストは「続きを読む」からどうぞ。
「…あの、俺…。」
「待て。」
やっと話を始めようとした俺を、ラファエロが手で制する。彼はそのまま屋上の端まで歩いていき、下の路地をのぞき込んだ。
「ラファエロ…?」
「しっ。」
声をかけた俺に、ラファエロは唇の前に指を立て、続いてこっちに来い、と手招きをした。
俺もつられて下をのぞき込むと、その路地にけたたましいブレーキ音を響かせながら、一台のトラックが入ってきた。中から降りてきたのは、どう見ても人相の悪い奴らだった。
「…パープル・ドラゴンの連中だな。へっ、暴れがいがあるってもんだぜ。」
言いながら、ラファエロは腰からサイを引き抜く。話の途中だけど、あいつらを放っておくわけにはいかない。俺も背中から刀を抜き、戦闘に備える。
奴らが全員ビルの中に消えたのを見計らって、俺たちは揃って屋上から飛び降りた。
トラックの陰に隠れ、様子を伺う。どうやらまた盗みを働いているらしい。中から物の壊れる音が断続的に聞こえてきている。
「どうせなら、奴らが全員揃ったところで登場といきたいよな。」
「同感だ。」
そこで俺たちは、奴らが建物から出て来るまで待つことにした。奴らはきっと油断している。そこが付け目だ。
やがて、中から戦利品を抱えた奴らが出てきた。強盗行為が成功した直後に俺たちが現れたんだから、連中の驚きは相当なものだったろう。
「よお。わざわざ俺たちに痛めつけられに来たのか? ご苦労さん。」
サイを回しながらラファエロが挑発する。
「さぁてレオナルド。このぜんぜん懲りないマヌケなストリートギャングたちには、一体どうすればいいと思う?」
「もちろん、お仕置きさ。…タートルズ流のな。」
「その通り! よくわかってんじゃねえか。」
刀を奴らに向けて構えると、ラファエロもそれにならい、サイを体の前で交差させる。
「さあ、お仕置きタイムだ。行くぜ!」
「やっ…、野郎ども、やっちまえ!」
真ん中にいたリーダー格の男が今さら命令を下すが、もう遅い。
「はあっ!」
まずはラファエロが向かってきた男をキック一発で地に伏せ、次の奴が持っていた棍棒をサイで絡め取って殴り飛ばす。
俺も負けじと、手近にいた男の鉄パイプを細切れにし、後ろから来た奴と一緒に刀で弾き飛ばす。
「ふっ!」
「そう言えばよお、レオナルド!」
奴らを軽くあしらいながら、ラファエロが言う。
「お前、何か話があるって言ってたよな!」
「ええ!? 今言うのか?」
向かってきたデカいのに拳を叩き込みながら、俺は返事を返した。
「ああ! どうせこいつらには関係ない事だろ! っと!」
ラファエロの腕に分銅付きの鎖が巻き付く。しかし彼は引っ張られた勢いを利用し、奴に跳び蹴りを食らわせた。
「それはそうだけどっ!」
戻ってきたラファエロと背中合わせになる。残った数人に囲まれるが、俺はそれどころじゃなかった。
「ほら、早く言え!」
「うっ…、…わかった、言うよ!」
一呼吸置いて、俺は一気にぶちまけた。
「俺、ラファエロが好きだ!」
刀を持っていた奴と鍔迫り合いになる。しかし、腹めがけて蹴りを入れると、油断していた奴は呆気なく吹っ飛んでいった。
「…それは、家族として、か!?」
走ってきた奴の勢いをそのまま使い、腕を掴んで後方へと投げ飛ばす。ラファエロの言葉に俺は首を振り、
「いや! それ以上だ!」
一回飛ばされたにも関わらず、復活してまた殴りかかってきた奴を、自分の後ろにいた奴と衝突させる。まったく、いくらやってもキリがない。
だが、次の瞬間、俺は耳を疑った。
「嬉しいぜ、レオナルド!」
奴らのパンチを軽々と避けながら、ラファエロが言った。
「お前が、そんな風に、思ってくれてたなんてよ!」
最後にそいつらを回し蹴りで仕留める。しつこかったけど、これで全員片づいた。
「ひぃっ、お、お前ら、ずらかるぞ!」
リーダー格の男に引きずられるように、奴らは這々の体で逃げ去っていった。
「ふん、口ほどにもねぇ。」
ラファエロは得意げに笑い、サイを腰にしまった。
一方、俺はさっきのラファエロのセリフが気になってしょうがない。今、「嬉しい」って、言ってなかったか…!?
「ら、ラファエロ…、さっき、何て…?」
「あ? …何だよ、聞いてなかったのか?」
俺が頷くと、ラファエロは困ったような顔になり、
「あー、そのー、つまりだな…。」
そこで言葉を切ると、ラファエロは俺の後頭部に手をやり、強引に自分の方に引き寄せた。
「えっ、あ…。」
急に近くなる、俺たちの顔の距離。唇を塞がれて、俺は頭が真っ白になってしまった。
「…つまり、だ。俺もお前が好きってこった。…分かったか?」
それだけ言うと、ラファエロはくるりと俺に背を向けてしまった。もしかして、照れているのだろうか。
「分かったんなら、そろそろ帰ろうぜ。」
俺が何か言う間もなく、ラファエロは近くの非常階段を素早く昇り、俺を見下ろした。
「リーダーに続けのゲームの、再開といこうじゃねえか。」
そこでようやく我に返った俺は、慌ててラファエロを追いかけた。
「待て、ラファエロ!」

満月の光の中、俺たちは夜のニューヨークを走る。思うままに体を動かしながら。
「なあラファエロ、本当に俺のこと好きなのか!?」
「何だぁ、信用できねぇ、ってか?」
俺の横に並んで走りながら、ラファエロは大きく息を吸いこんで叫んだ。
「愛してるぜぇ、レオナルド!!」
「なっ…、誰がそんなこと叫べって言った!」
嬉しさと恥ずかしさがごちゃ交ぜになって、顔が真っ赤になる。
「証明できたろ? さ、我が家まで競争だ!」
「はぐらかすな!」
これじゃあムードも何もあったものじゃない。でも、俺の心は不思議に温かかった。

そう、この温もりと揺るぎない想い。
それさえあれば、俺たちは誰にも負けやしない。
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