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タートルズSS 「Con te partiro!」 (ジックス×ドナテロ) 

その日、俺は依頼を片付け、地球に戻る途中だった。
目当ての物をまんまと奪取し、クライアントに届け、晴れ晴れとした気分で帰路につく。
地球からはかなり離れた星まで行ったが、その分依頼料は高額だ。しばらくは不自由しないだろう。それに、
(もう一週間も、ドナテロに会っていないからな…)
さぞかし寂しがっているだろう。想う相手の顔を頭に浮かべ、俺は口元を綻ばせる。その時だった。
「…ん?」
不意に、俺の中を風が吹き抜けた。例えて言うなら、今までずっとそこにあった温かいものが取り払われ、急速に体温が奪われて冷えていくような、そんな喪失感にも似た感覚。何なんだ、これは…!?
表情を引き締めて、計器類やセンサーをチェックする。現在、この船の周囲に怪しい船籍はない。したがって、トリケラトンの奴らに追われてるという可能性は皆無。他にも、怪しい気配はないようだ…。
(…ふん)
俺は先ほどの違和感を、依頼をこなして気が緩んだせいだと思った。いかんな、いくら帰りとはいえ、道中何が起こるか分からない。俺は気を引き締めて、操縦桿を握り締めた。

何事もなく地球に帰り着いた俺は、さっそく左腕の端末を操作し、ドナテロに連絡を入れようとした。無事依頼を終えて帰ってきたから、今夜はそちらに行く、と。しかし。
「…ドナテロ?」
応答がない。妙だな、いつもなら通信を受けられない状況でも、何かしらメッセージを送ってくるのに。
不思議に思いながら、俺はドナテロたちが暮らすペントハウスに足を向けた。ガラス張りのリビングを、外から覗き込む。…誰もいない。
どこかに出掛けているのか。それにしても応答がないのはおかしい。
必死に考えを巡らせる。何か事件に巻き込まれたか。いや、ドナテロ達なら、何があろうと解決できるはずだ。どういう事なんだ…。
(ドニー…)
路地裏に潜んで、ぼんやりと空を見上げる。ビルに切り取られた空に映るのは、白く光る月。
と、そこで思いつく。確か彼らは、あの月にも行ったことがあるはずだ。あり得ない話ではない。今や月は、地球から簡単に行き来が出来る、レジャースポットのような物になっている。
(行ってみるか…)
ここで考えに沈んでいても仕方ない。俺は空に浮かぶ月を目指し、自分の船に乗り込んだ。

       *       *       *       * 

ムーンベースは、様々な人種で溢れていた。ビジネスの用で来る者、買い物を楽しむ者、月を経由して地球に入る者と、目的は千差万別。
その中を、俺は茫然と歩いていた。理由は単純、ドニーが見つからなかったからだ。
これだけの数の人がいても、彼らの姿はやはり目立つ。だから、少し探せば出会えると思っていたのだ。
(どこに行った…?)
眼下に広がる宇宙と、青く輝く地球を眺める。ガラスに手を当てると、思った以上に憔悴した自分の顔が映っている。地球にも月にもいないとすれば…、他の惑星、か?
これも有り得ない話ではない。今の時代、宇宙を航行できる船さえ持っていれば、旅行感覚で他の惑星にも行くことが出来る。あのお坊ちゃんなら、そんな船ぐらい普通に持っているだろう。
(となれば、まずは有名なリゾート惑星から探してみるか…)
宛てもない探索の旅が始まる。力なく踵を返し、俺はごった返すムーンベースを後にした。

(ここにもいない、か…)
作っておいたチェックリストに、最後の×がついた。
ドニーを探して、俺は宇宙を駆け回った。数十個ほどリストアップしたリゾート惑星を一つずつ廻り、ドニーの写真を見せ、あちこち聞き歩く。地道な作業だが、全く実を結ばない。
折れそうになる心を支えるのは、ドニーに会いたいという想いだけ。今まで何百回とついたため息が、もう一つ増えた。
(リゾート惑星にいない、とすれば…)
あと考えられるのは、…トリケラトンが支配する惑星。タートルズのことだ、奴らと戦っているかもしれない。
…そこに居るという確証はどこにもない、が…。
(行ってみるしかないか)
危険なのは分かりきっている。だが、自らの身が危なくなるとしても、俺はドニーに会いたい。俺は一路、トリケラトンの惑星に足を向けた。

       *       *       *       *

観光客がひしめくショッピングモール。観光施設の体裁を取ってはいるが、ここは実質的にトリケラトンの本拠地だ。気を引き締めてかからねば…。
恐らく、ここでの聞き込みは危険だ。どこから俺の情報が漏れるか分からない。マントを目深に被り、人混みに紛れつつ、注意深く目を凝らしながら歩いていく。しかし。
「動くな」
背後から掛けられた濁声に、ひたりと足を止める。同時に、背中に銃口が押し付けられる。この声、間違えるはずもない。
「ボス・ズッコ…!」
「覚えていてくれたとは光栄だ」
下卑た笑い声が、頭上から降ってくる。
「お前の行動、読まれていないとでも思ったか? ここがワシらの本拠地なのは知っているはずだな。さぁ答えろ。今度は何を盗みに来た?」
ごり、と背中の銃口が音を立てる。思いのほか、早くに見つかってしまった。だったら、それを逆手に取るまでだ。
「…一つだけ、聞きたいことがある。タートルズは、ここに来ているか?」
「…何? タートルズ…、あのカメ共か。そんな奴らは見ておらん」
「…そうか」
トリケラトンの実質的なリーダーであるこいつが言うなら、それは真実なのだろう。つまり、ドニーはここにもいない。
「…ならば、もうここに用はない」
腰の後ろから煙幕弾を3つ取り出し、思い切り床に叩きつける。白い煙が辺りを覆い、周囲が軽いパニックに陥った。
「なっ…!?」
動揺するズッコの隙を突き、俺はその場から逃げ出す。自分の船に乗り込むと、ズッコ率いるトリケラトンの軍勢が追ってくるのが見えた。
「お前たち! 奴を逃がすな!」
「全く、何も奪っていないというのに、しつこいな」
船を発進させると、奴らも宇宙船に乗って追い掛けてくる。まともにやり合うつもりはない。やり過ごすか。俺は大きめの小衛星の影に隠れ、スイッチを入れる。以前にも使った、自らの宇宙船をダークマターの流星に見せかける装置。これなら、奴らのレーダーにも引っかからないだろう。
こうして、俺はまんまと、トリケラトンの惑星から逃げ出すことに成功した。

       *       *       *       *

地球に戻ってきた俺は、再び彼らが暮らしていたペントハウスに向かってみた。もしかしたら戻ってきているかもしれないと思ったからだ。
(いない…!)
広々としたリビングには、誰もいない。何故だ…、どういうことだ…!?
虚ろな目で、世界を眺める。夕方の陽に照らされ、橙色に染まる世界。…もうすぐ日が暮れる。夜になるのを待ってから、俺は建物の中に忍び込んだ。
薄暗い廊下をひた走る。ここにきて、俺は妙な違和感を感じていた。
「…人の気配がない…?」
そう。タートルズはおろか、警備用のロボットの姿すらなかった。それでも、廊下は申し訳程度に灯りが点っていたから、俺は足音を殺しながら走り抜ける。
記憶を頼りに、ドニーの部屋へ。扉に取り付き、耳をそばだてる。…中からは何の音もしない。そっと指先に力を加えると、鍵が掛かっていなかったのか、扉は難なく開いた。
窓から、外の明かりが差し込んでくる。部屋の中は、がらんとしていた。立てかけられていたはずの武器もなく、持ち主の気配すらない。
ベッドの横のチェストには、うっすらと埃が積もっていた。指先で撫でると、黒く汚れる。この積もり方からして、およそ四か月、この部屋は使われていない。そこまで考えた次の瞬間、急に部屋の明かりが点けられた。
「…誰?」
震えるような声に、ゆっくりと振り向く。扉を開けたままで硬直していたのは、顔にまだあどけなさを残す、赤毛の少年。今までまともに顔を合わせたことはなかったが、確か彼がコーディ・ジョーンズだったはずだ。
…そうだ、何故今まで気づかなかったんだ。タートルズと一緒にいた彼であれば、きっと居場所を知っているだろう。俺は彼に向き直り、慇懃に頭を下げた。
「…不躾な訪問をお許しください。あなたに、どうしてもお聞きしたいことがございまして」
「僕に、ですか…?」
彼― コーディは、怪訝な視線のままではあるが、部屋の中に入ってきてくれた。首を傾げる彼に、俺はストレートに話を切り出す。
「…タートルズは、今、どこに…?」
「っ…!」
表情が変わった。体の内の痛みを、必死で堪えるような顔に。やはり彼はタートルズの、ドニーの居場所を知っている。
「お願いです、教えていただきたい…。彼らは、どこに行ってしまったのですか…?」
今まであえて考えないようにしていた結末が、頭をよぎる。もしかしたら彼らは、もう、この世にいないのではないか。その考えを何とか振り切りたくて、俺はコーディの目をじっと見つめる。
しかし、彼の口から滑り出てきたのは、全く予想外の言葉だった。
「タートルズは…、帰りました」
「帰った? どこに?」
「…彼らが、元々いた、…時代に、です」
「なっ…!?」
絶句する俺に、コーディは丁寧に説明をしてくれた。タートルズは最初からこの時代にいたわけではなく、過去からタイムスリップしてきた存在だということ。
元の時代に帰るために、「タイムウィンドゥ」の作成を進めていたこと、トラブルもあったがそれは何とか完成し、タートルズは元の時代に帰って行った、という。
「その時に、ちょっと問題が起きてしまいまして…。タイムウィンドゥは故障して、巻き込まれたサーリンも一緒に、あっちへ行ってしまったんだ…」
サーリン。あの警備ロボットのことだろう。だが、俺にはそんなことはどうでも良かった。
簡単には手の届かない場所に行ってしまったが、ドニーはちゃんと、向こうで生きている。生きている…!
「…っ」
張りつめていた心の糸が解け、俺はその場にへたり込んでしまう。泣いていると思ったのか、コーディはそれ以上俺に構うことなく、そっとしておいてくれた。


それからの俺は、出来る限り迅速に動き始めた。
まず行ったのが、自らが所持している武器・弾薬の類を、全て売り払ってしまうこと。
相手がトリケラトンだろうが、怪しい商人だろうが、高値で買い取ってくれるなら誰でも良かった。
少々時間はかかったが、俺は所持品を自分の宇宙船以外、一つ残さず処分してしまった。代わりに受け取った代金で、口座は膨れ上がっている。
後日、今度はちゃんとアポイントメントを取った上で、俺はコーディと再び顔を合わせた。俺が案内されたのは、先日のペントハウスではなく、オニール・テック社の本社ビルだった。
(そういえば、コーディはここのCEOだったな…)
重厚な扉をノックすると、すぐに声が返ってくる。部屋の中には、かなり大きな机と、しっかりスーツを着こんで椅子に腰掛ける、コーディの姿があった。
「ジックスさん」
忙しそうではあったが、彼は俺に笑みを向けてくれた。しかし、「さん」をつけて呼ばれると、少しこそばゆい。
「…お似合いですよ、スーツ」
「止めてください…。まだ慣れなくて」
困ったように笑うコーディだったが、次の瞬間にはちゃんとCEOとしての顔に戻っていた。
「それで、本日は何の御用件でしょうか?」
言われて、俺は懐から小さな封筒を取り出す。中には、俺の全財産が預けてある口座にアクセスできる、カードキーが入っていた。テーブルの上に置いて、彼の方に滑らせる。
「…これは?」
「俺の、全財産が入っています。これを使って、…タイムウィンドゥを、もう一度作っていただきたいのです」
「…何のために?」
値踏みするようなコーディの視線。俺は言葉に詰まり…、どうせ、全てを手放すのだ。なら、真実を述べよう。そう思った。
「…ドナテロに、もう一度会いたい。それだけです…!」
我ながら、驚くほど声が掠れていた。マントの下で、両の手のひらを固く握りしめる。
以前、コーディは言っていた。タートルズが元の時代に帰るためには、タイムウィンドゥが必要だったと。ならば、それをもう一度作ることが出来たなら。それを使えば、俺はドニーにもう一度会えるのではないか…!?
だからこそ、全財産を金に換えた。何かあれば、協力も惜しまぬつもりだった。こうして誠意を尽くすことしか、今の俺には出来なかったから。
コーディは何も言わぬまま、じっと俺を見つめていたが、やがて表情を崩し、頷いてくれた。
「分かりました。全力を尽くします」
「…あ、ありがとうございます…!」
感謝の意を込めて、俺はコーディに深々と頭を下げた。


その日から、コーディのペントハウスに身を寄せる日々が始まった。
彼は仕事の合間を縫って、タイムウィンドゥの作成に取り掛かってくれた。CEOとしての仕事の他に、俺の頼みも聞いてくれているわけだから、さぞかし疲れも溜まるはずだ。
しかし、コーディはそんな素振りを見せることもなく、楽しそうに作業をしてくれていた。
俺は出来る限りそれを手伝い、足りない材料があれば、すぐさま調達しに出掛ける。どんな危ない橋を渡ってでも。
タイムウィンドゥの作成は困難を極め、起動実験に何度も失敗した。だが、俺もコーディも諦めなかった。絶対に完成させてみせる。そんな強い決意を、俺たちは胸に固めていた。


そして、俺がコーディに依頼をしてから半年。タートルズが元の時代に帰ってから、ちょうど一年が過ぎたころ。

ついに、タイムウィンドゥが完成した。

       *       *       *       *

「本当に、いいの?」
「あぁ」
「もう二度と、こっちの時代には帰ってこられないんだよ?」
「ドニーのいない世界に、未練などないさ」
念を押すような問いに、俺は即答を返す。…実際のところ、この半年の共同生活で、俺とコーディはすっかり打ち解けていた。彼と離れてしまうのは少し寂しい気もするが、仕方ない。
コーディも同じらしく、寂しそうな表情をしていた。が、俺の心が変わらないのを見て取ったのか、一度だけ深く頷き、笑顔になってくれた。
「…うん、分かった」
タイムウィンドゥは、かなり大がかりなものとなっていた。壁際の装置のレバーが下ろされる。少しの間を置いて、目の前の四角いゲートの中に、過去へと繋がるトンネルが現れた。
「時代設定も完璧だよ」
「ありがとう、コーディ。心から感謝している」
すっと右手を差し出すと、コーディもそれに応じてくれた。固く握手を交わし、別れの挨拶の代わりとする。
「俺の船をここに残してしまうことになるが、適当に処分しておいてほしい。…最後まで苦労をかけて済まない」
「大丈夫だよ」
今の俺は、身一つの状態。未来の品は過去には持っていけないから、俺はいつものマントを纏った服装以外に、何も装備していなかった。
「何かあいつらに伝えたいことはないか?」
「あ、それじゃあ…、みんなに、僕は元気だよって伝えて。後…、サーリンに、ごめんね、って」
「分かった、伝えよう。…そうだ、俺からも伝言だ。プレジデントに伝えてくれ。もうあんたの手を煩わせることはない、とな」
「…うん」
いよいよだ。見慣れたこの景色とも、コーディとも、…この時代ともお別れだ。俺は何よりも大切なものを、もう一度この手にするため、時の彼方へ旅立っていく。
「…コーディ、元気でな」
「ジックスもね」
泣き笑いのような表情で、コーディが俺に手を振る。軽く右手を上げ、俺はタイムウィンドゥの中に身を躍らせた。
うねるような時間の流れの中を、泳ぐように進む。やがて、前方に小さく、目的地が見えてきた。それは瞬く間に大きさを増し、俺はぽんと放り投げられるように時間の流れから抜け出し、たたらを踏んだ。
「おっ、と…」
かろうじて、転倒は免れる。振り向くと、すでに時間のトンネルは消えていた。しかしここは何だ? 下水道か?
「……」
本当に、ここにいるのだろうか。とりあえず前に向かって歩き出すと、通路を抜けた先に、広い空間があるのが見えた。物陰に潜みつつ、辺りを見回す。
部屋の中央に、大きなコンピュータ端末が置かれていた。おおよそ、下水道には不似合いなもの。そして、前に置かれた椅子に深々と腰掛けるのは、…俺が、ずっと探し求めていた相手。
彼はキーボードを叩き、システムを立ち上げる。一年ぶりに耳にする声は、少しも変わっていなかった。
「…プログラム、起動。解除ワードは…。」
そこで俺は、耐えきれずに声を上げる。
「…It's Ninja Time。そうだろう?」

―逢いたかった。全てと引き換えてでも、逢いたかった。

「…ドナテロ」

「…えっ?」
ゆっくりと、椅子ごと彼がこちらを向く。紫色のバンダナがふわりと揺れる。信じられないといった面持ちで、彼が俺の名を呟いた。

「…ジッ、クス…?」

そこが、我慢の限界だった。凭れていた壁から離れ、床を蹴って駆け出す。

探して、求めて、焦がれ続けて。遥かな時間を渡って、再び会うことの叶った、心から愛しく想う存在を、俺はようやく、この腕に抱き締めた――

       *       *       *       *

幸せな夢だった。
出来れば永久に、この甘やかな雰囲気に浸っていたいと思えるような。
しかし、俺は静かに目を覚ます。息をつくと、少しずつ身体に意識が行き渡っていく。
まだ、部屋の中は暗い。ベッドに横たわったまま、俺は辺りを見回す。ベッドサイドの時計が示す時刻は、朝の五時を回っている。四角いテーブル、壁際のテレビ…。
…あぁ、俺の部屋だ。ドニーがいる時代の、…俺の部屋だ。
ベッドの上に体を起こすと、隣で眠っているドニーの姿が目に入った。こちらに顔を向け、穏やかな寝息を立てている。
(ドニー)
頬を指先で撫でると、ドニーは少しだけ眉間に皺を寄せる。その様子が愛しくて…、気がつくと、俺の目からは涙がとめどなく溢れ出していた。
「あ、れ…?」
拭っても拭っても、止まってくれない。胸の中に満ちた、得体の知れない、暖かいものが、涙となって流れてくるみたいだ…。
「…ん、ジックス?」
しばらく肩を震わせていると、眠っていたドニーが目を覚ました。俺が泣いているのを見て、驚いた表情になる。
「どうしたのジックス…、何で泣いてるの!?」
「いや、ちょっと、な…」
泣くなんて何年ぶりだろうか。濡れた頬をティッシュで拭うと、やっと涙が止まってくれた。心配そうに体を擦り寄せてきたドニーに、俺は安心させるような笑みを向ける。
「お前と離れていた頃の夢を見ていたんだ」
「夢?」
ドニーの肩を抱いて、俺はとつとつと語りだす。姿を消したドニーを探して、宇宙を何か月も探し回ったこと。トリケラトンの惑星から逃げてきたこと。親しくなれたコーディとのこと。
そして、何度も失敗を重ねた、タイムウィンドゥを作っていた日々のこと。今となっては思い出深い事柄を、俺はドニーに全て話した。
「一年もかかってしまったが、その間、一日たりとも、お前を想わない日はなかったよ」
優しく言うと、ドニーは目をしばたたかせ、…何故か泣き出してしまった。
「ドニー、俺が泣き止んだのに、お前まで泣いてどうする」
「ごっ、ごめん…!」
溢れる雫を拭うと、ドニーは俺の胸に額を押し付けてくる。
「だって、申し訳なくて…」
「何がだ?」
しゃくり上げる声が、新たな涙に濡れる。
「ジックスが、そんなに僕のことを想ってくれてたのに、僕、ジックスのこと、忘れかけてた…!」
「…いいさ。こうして、また会えたんだから…」
そっと腕を回して抱き締めると、ドニーも俺の背に腕を回した。

…もう、何百回と口にした。それでも伝えきれない想いを、俺は改めて言葉にする。

「愛してるよ、ドニー」

するとドニーは、俺と同じように、想いを言葉にして返してくれる。

「僕も大好き…、ほんとに大好きだよ、ジックス…!」

「…ありがとう」

もうすぐ夜が明ける。カーテンの向こうの世界が、少しずつ明るくなっていく。

二度と離さない。離れない。その気持ちは、あの頃から全く変わっていない。

さぁ、過去に別れを告げ、新しい明日へ向かおう。

…二人で、一緒に。








ジックスを泣かせたかったんです

ジックスが泣くなら、それはやっぱりドニー絡みだろうと思って、今回は二人の間にあった一年間の空白期間を書きました。

タイトルは名曲です。直訳は「君と共に旅立とう」ですかね

では
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