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銀鉄SS 「Permanent Vacation」 (バルジ×渉) 

目が覚めて最初に見えたのは、いつもの自分の部屋の白い天井ではなく、温かみのある、木目の天井。
「あれ…。」
何度か瞬きをして、私はその場に起き上がってみる。カーペットの上に敷かれた布団、見覚えのない箪笥、二つの勉強机…。
「…あ。」
そこまで見て、やっと私は昨夜のことを思い出した。確か、夏の休暇を自宅で過ごされる有紀隊長のお供をして、隊長のご実家に泊まらせていただいたんだった…。
簡単に布団を畳んで、身支度を整え、私は階下へと降りていく。居間を通り抜けると、そこが「銀河亭」というラーメン屋の店舗になっている。有紀隊長の奥様、カンナさんは、そこにいた。
「おはようございます…。」
完全に寝過ごしているため、私は恐る恐る奥様に声を掛ける。しかし、彼女は怒ったような素振りもなく、
「あら、バルジさん、おはようございます。よく寝ているから起こさないで上げてって、子供たちにも言ってあったんですよ。」
「そうなんですか…。」
座って、と言われて、私はカウンター席の隅の方に腰掛ける。すると、私の前に遅めの朝食が用意された。
「朝の残り物で悪いんだけれど…。」
「いえ、とんでもありません。ご馳走になります。」
言って、私は箸を取り、味噌汁から口をつける。優しい味わいが、全身を温めてくれた。
「あの、すみません。有紀隊長は、どちらへ…?」
「あぁ、あの人なら、子供たちを森の中の湖に連れて行ってるわ。泳ぎたいんですって。」
「なるほど…。」
話をしながら、食事を続けている間にも、銀河亭は徐々に込み合ってくる。奥様はその対応をてきぱきとこなしてらっしゃった。
「何か、お手伝いでもしましょうか?」
食後のお茶を飲み干し、私は奥様にそう聞いてみる。泊まらせていただいて、何のお手伝いもしないのでは、申し訳ないと思ったからだ。でも、
「あら、いいのよ。せっかくの休暇なんだもの。手伝わせてしまうのも悪いし。」
「はぁ…。」
確かに、不慣れな私が手伝うよりは、勝手知ったる奥様が一人で切り盛りする方が良いのかもしれない。しかし…。
「それより、あなたも湖に行ってきたら? あの人一人で護と学を両方見るのは、少し大変だと思うから。」
「…そうですか。では、お言葉に甘えまして…。」
私は席を立ち、自分が使わせていただいた食器を片付け、外へ出てみた。明るい日差しは明らかに夏の物だが、吹き抜ける風はとても爽やかだった。泳ぐのにはちょうどいい日だ。きっと子供たちもはしゃいでいるだろう…。


居住区から森までは、大きな道を真っ直ぐ行く。よほどの事がない限り、迷うことはなかった。
森に入っても、丁寧に草の刈られた道が、ずっと湖へと伸びている。きっと有紀隊長たちも、この道を通ったはずだ。
やがて、木々の向こうに、きらきらと輝く水面と、子供たちの笑い声が聞こえてきた。
「有紀隊長…っ!」
森を抜けたところで、彼の姿を認めた私は、文字通り硬直してしまった。
有紀隊長が、水着姿だったからだ。子供たちと一緒に泳いだらしく、その体は濡れている。その姿が、眩しくて…。
「…あぁ、バルジ。お前も来たのか…。」
「…あ、え、はい…。」
私はしどろもどろになりながら、手近な木陰へと身を寄せた。真っ赤になった顔を、隊長に見られたくなかったのだ。
「全く、子供たちは元気だな…。少々疲れてしまったよ。」
そう呟いて、隊長は草地に敷いてあったビニールシートに腰掛ける。よく見るとその傍らには、飲み物と、お弁当が入っていると思われるバスケットが置いてあった。ここで一日中遊ぶつもりできたらしい。
「……。」
有紀隊長の隣に座らせていただきながら、私は湖で遊ぶ幼い兄弟に目をやった。有紀隊長が、何よりも大切に思っている存在。
「あまり深い場所まで行くなよ!」
有紀隊長の声に、二人は揃って返事をする。ばしゃばしゃと勢い良く水飛沫を上げ、父と一緒に過ごす休日を、心から楽しんでいるように見える。
「バルジ、お前が来てくれて助かったよ。」
「えっ…?」
不意に言われて、私は心臓が高鳴る。横にいる有紀隊長は、青いタオルを首に掛け、優しい眼差しを子供たちに注いでいた。
「どうせ二人とも、帰るころには疲れて眠ってしまうだろう。そんな二人を同時に連れて帰るのは、ちょっと難しいからな。」
「…そうですね。」
あのはしゃぎ様では、有紀隊長の仰ったとおりになるだろう。そういった意味でも、ここに来たのは良かったかもしれない。
「ふう…。」
有紀隊長は目を閉じ、風を浴びて心地よさそうな表情になる。それを見て、私の心はちくりと痛んだ。
辺りに響くのは、子供たちの上げる歓声と、水の音だけ。その静寂を壊さない程度に、私は小さく呟いた。
「…有紀隊長、私は…。」

…私は、あなたが好きです。奥様や子供たちには敵わないのは分かっていますが、それでも。

その続きをとうとう口に出せず、私は黙り込んでしまう。飲み込んだ言葉の続きが、涙となって、私の目から溢れ出した。
(まずい…!)
隊長への想いを自覚してから、私は何度も涙を流してきた。叶わないと分かっている想いが苦しすぎて。せめてここにいる間は、泣かないようにしようと頑張っていたのだが…。
慌てて指先で拭うも、涙は止まってくれない。そんな私に、隊長はタオルを差し出してくれた。
「どうした?」
「…いえ、目にゴミが入ったようです…。ありがとうございます。」
タオルを受け取って涙を拭くと、私は気持ちを切り替えた。有紀隊長に、いらぬ心配を掛けたくなかったから。
「お兄ちゃん! 一緒に泳ごうよ!」
掛けられた声に視線をやると、子供たちが私に向かって手を振っていた。
「こらお前たち、バルジは水着を持ってきていないんだぞ!」
「大丈夫です、有紀隊長。一緒に遊んできます。」
有紀隊長にそう返し、私はブーツを脱ぎ捨て、膝の辺りまでズボンの裾を捲り上げて、バスケットの横に置いてあったビーチボールを片手に、水の中に入って行った。ひんやりした水が心地いい。
「行くぞ!」
ボールを投げると、すかさず子供たちがそれを取りに行く。先ほどの涙を忘れるため、私は子供たちと全力で遊び始めた。


彼の、側にいられる。 今の私は、それだけで良かった。

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