09« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»11

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリ: スポンサー広告

tb: --    cm: --

タートルズSS 「Con te partiro!」 (ジックス×ドナテロ) 

その日、俺は依頼を片付け、地球に戻る途中だった。
目当ての物をまんまと奪取し、クライアントに届け、晴れ晴れとした気分で帰路につく。
地球からはかなり離れた星まで行ったが、その分依頼料は高額だ。しばらくは不自由しないだろう。それに、
(もう一週間も、ドナテロに会っていないからな…)
さぞかし寂しがっているだろう。想う相手の顔を頭に浮かべ、俺は口元を綻ばせる。その時だった。
「…ん?」
不意に、俺の中を風が吹き抜けた。例えて言うなら、今までずっとそこにあった温かいものが取り払われ、急速に体温が奪われて冷えていくような、そんな喪失感にも似た感覚。何なんだ、これは…!?
表情を引き締めて、計器類やセンサーをチェックする。現在、この船の周囲に怪しい船籍はない。したがって、トリケラトンの奴らに追われてるという可能性は皆無。他にも、怪しい気配はないようだ…。
(…ふん)
俺は先ほどの違和感を、依頼をこなして気が緩んだせいだと思った。いかんな、いくら帰りとはいえ、道中何が起こるか分からない。俺は気を引き締めて、操縦桿を握り締めた。

何事もなく地球に帰り着いた俺は、さっそく左腕の端末を操作し、ドナテロに連絡を入れようとした。無事依頼を終えて帰ってきたから、今夜はそちらに行く、と。しかし。
「…ドナテロ?」
応答がない。妙だな、いつもなら通信を受けられない状況でも、何かしらメッセージを送ってくるのに。
不思議に思いながら、俺はドナテロたちが暮らすペントハウスに足を向けた。ガラス張りのリビングを、外から覗き込む。…誰もいない。
どこかに出掛けているのか。それにしても応答がないのはおかしい。
必死に考えを巡らせる。何か事件に巻き込まれたか。いや、ドナテロ達なら、何があろうと解決できるはずだ。どういう事なんだ…。
(ドニー…)
路地裏に潜んで、ぼんやりと空を見上げる。ビルに切り取られた空に映るのは、白く光る月。
と、そこで思いつく。確か彼らは、あの月にも行ったことがあるはずだ。あり得ない話ではない。今や月は、地球から簡単に行き来が出来る、レジャースポットのような物になっている。
(行ってみるか…)
ここで考えに沈んでいても仕方ない。俺は空に浮かぶ月を目指し、自分の船に乗り込んだ。

       *       *       *       * 

ムーンベースは、様々な人種で溢れていた。ビジネスの用で来る者、買い物を楽しむ者、月を経由して地球に入る者と、目的は千差万別。
その中を、俺は茫然と歩いていた。理由は単純、ドニーが見つからなかったからだ。
これだけの数の人がいても、彼らの姿はやはり目立つ。だから、少し探せば出会えると思っていたのだ。
(どこに行った…?)
眼下に広がる宇宙と、青く輝く地球を眺める。ガラスに手を当てると、思った以上に憔悴した自分の顔が映っている。地球にも月にもいないとすれば…、他の惑星、か?
これも有り得ない話ではない。今の時代、宇宙を航行できる船さえ持っていれば、旅行感覚で他の惑星にも行くことが出来る。あのお坊ちゃんなら、そんな船ぐらい普通に持っているだろう。
(となれば、まずは有名なリゾート惑星から探してみるか…)
宛てもない探索の旅が始まる。力なく踵を返し、俺はごった返すムーンベースを後にした。

(ここにもいない、か…)
作っておいたチェックリストに、最後の×がついた。
ドニーを探して、俺は宇宙を駆け回った。数十個ほどリストアップしたリゾート惑星を一つずつ廻り、ドニーの写真を見せ、あちこち聞き歩く。地道な作業だが、全く実を結ばない。
折れそうになる心を支えるのは、ドニーに会いたいという想いだけ。今まで何百回とついたため息が、もう一つ増えた。
(リゾート惑星にいない、とすれば…)
あと考えられるのは、…トリケラトンが支配する惑星。タートルズのことだ、奴らと戦っているかもしれない。
…そこに居るという確証はどこにもない、が…。
(行ってみるしかないか)
危険なのは分かりきっている。だが、自らの身が危なくなるとしても、俺はドニーに会いたい。俺は一路、トリケラトンの惑星に足を向けた。

       *       *       *       *

観光客がひしめくショッピングモール。観光施設の体裁を取ってはいるが、ここは実質的にトリケラトンの本拠地だ。気を引き締めてかからねば…。
恐らく、ここでの聞き込みは危険だ。どこから俺の情報が漏れるか分からない。マントを目深に被り、人混みに紛れつつ、注意深く目を凝らしながら歩いていく。しかし。
「動くな」
背後から掛けられた濁声に、ひたりと足を止める。同時に、背中に銃口が押し付けられる。この声、間違えるはずもない。
「ボス・ズッコ…!」
「覚えていてくれたとは光栄だ」
下卑た笑い声が、頭上から降ってくる。
「お前の行動、読まれていないとでも思ったか? ここがワシらの本拠地なのは知っているはずだな。さぁ答えろ。今度は何を盗みに来た?」
ごり、と背中の銃口が音を立てる。思いのほか、早くに見つかってしまった。だったら、それを逆手に取るまでだ。
「…一つだけ、聞きたいことがある。タートルズは、ここに来ているか?」
「…何? タートルズ…、あのカメ共か。そんな奴らは見ておらん」
「…そうか」
トリケラトンの実質的なリーダーであるこいつが言うなら、それは真実なのだろう。つまり、ドニーはここにもいない。
「…ならば、もうここに用はない」
腰の後ろから煙幕弾を3つ取り出し、思い切り床に叩きつける。白い煙が辺りを覆い、周囲が軽いパニックに陥った。
「なっ…!?」
動揺するズッコの隙を突き、俺はその場から逃げ出す。自分の船に乗り込むと、ズッコ率いるトリケラトンの軍勢が追ってくるのが見えた。
「お前たち! 奴を逃がすな!」
「全く、何も奪っていないというのに、しつこいな」
船を発進させると、奴らも宇宙船に乗って追い掛けてくる。まともにやり合うつもりはない。やり過ごすか。俺は大きめの小衛星の影に隠れ、スイッチを入れる。以前にも使った、自らの宇宙船をダークマターの流星に見せかける装置。これなら、奴らのレーダーにも引っかからないだろう。
こうして、俺はまんまと、トリケラトンの惑星から逃げ出すことに成功した。

       *       *       *       *

地球に戻ってきた俺は、再び彼らが暮らしていたペントハウスに向かってみた。もしかしたら戻ってきているかもしれないと思ったからだ。
(いない…!)
広々としたリビングには、誰もいない。何故だ…、どういうことだ…!?
虚ろな目で、世界を眺める。夕方の陽に照らされ、橙色に染まる世界。…もうすぐ日が暮れる。夜になるのを待ってから、俺は建物の中に忍び込んだ。
薄暗い廊下をひた走る。ここにきて、俺は妙な違和感を感じていた。
「…人の気配がない…?」
そう。タートルズはおろか、警備用のロボットの姿すらなかった。それでも、廊下は申し訳程度に灯りが点っていたから、俺は足音を殺しながら走り抜ける。
記憶を頼りに、ドニーの部屋へ。扉に取り付き、耳をそばだてる。…中からは何の音もしない。そっと指先に力を加えると、鍵が掛かっていなかったのか、扉は難なく開いた。
窓から、外の明かりが差し込んでくる。部屋の中は、がらんとしていた。立てかけられていたはずの武器もなく、持ち主の気配すらない。
ベッドの横のチェストには、うっすらと埃が積もっていた。指先で撫でると、黒く汚れる。この積もり方からして、およそ四か月、この部屋は使われていない。そこまで考えた次の瞬間、急に部屋の明かりが点けられた。
「…誰?」
震えるような声に、ゆっくりと振り向く。扉を開けたままで硬直していたのは、顔にまだあどけなさを残す、赤毛の少年。今までまともに顔を合わせたことはなかったが、確か彼がコーディ・ジョーンズだったはずだ。
…そうだ、何故今まで気づかなかったんだ。タートルズと一緒にいた彼であれば、きっと居場所を知っているだろう。俺は彼に向き直り、慇懃に頭を下げた。
「…不躾な訪問をお許しください。あなたに、どうしてもお聞きしたいことがございまして」
「僕に、ですか…?」
彼― コーディは、怪訝な視線のままではあるが、部屋の中に入ってきてくれた。首を傾げる彼に、俺はストレートに話を切り出す。
「…タートルズは、今、どこに…?」
「っ…!」
表情が変わった。体の内の痛みを、必死で堪えるような顔に。やはり彼はタートルズの、ドニーの居場所を知っている。
「お願いです、教えていただきたい…。彼らは、どこに行ってしまったのですか…?」
今まであえて考えないようにしていた結末が、頭をよぎる。もしかしたら彼らは、もう、この世にいないのではないか。その考えを何とか振り切りたくて、俺はコーディの目をじっと見つめる。
しかし、彼の口から滑り出てきたのは、全く予想外の言葉だった。
「タートルズは…、帰りました」
「帰った? どこに?」
「…彼らが、元々いた、…時代に、です」
「なっ…!?」
絶句する俺に、コーディは丁寧に説明をしてくれた。タートルズは最初からこの時代にいたわけではなく、過去からタイムスリップしてきた存在だということ。
元の時代に帰るために、「タイムウィンドゥ」の作成を進めていたこと、トラブルもあったがそれは何とか完成し、タートルズは元の時代に帰って行った、という。
「その時に、ちょっと問題が起きてしまいまして…。タイムウィンドゥは故障して、巻き込まれたサーリンも一緒に、あっちへ行ってしまったんだ…」
サーリン。あの警備ロボットのことだろう。だが、俺にはそんなことはどうでも良かった。
簡単には手の届かない場所に行ってしまったが、ドニーはちゃんと、向こうで生きている。生きている…!
「…っ」
張りつめていた心の糸が解け、俺はその場にへたり込んでしまう。泣いていると思ったのか、コーディはそれ以上俺に構うことなく、そっとしておいてくれた。


それからの俺は、出来る限り迅速に動き始めた。
まず行ったのが、自らが所持している武器・弾薬の類を、全て売り払ってしまうこと。
相手がトリケラトンだろうが、怪しい商人だろうが、高値で買い取ってくれるなら誰でも良かった。
少々時間はかかったが、俺は所持品を自分の宇宙船以外、一つ残さず処分してしまった。代わりに受け取った代金で、口座は膨れ上がっている。
後日、今度はちゃんとアポイントメントを取った上で、俺はコーディと再び顔を合わせた。俺が案内されたのは、先日のペントハウスではなく、オニール・テック社の本社ビルだった。
(そういえば、コーディはここのCEOだったな…)
重厚な扉をノックすると、すぐに声が返ってくる。部屋の中には、かなり大きな机と、しっかりスーツを着こんで椅子に腰掛ける、コーディの姿があった。
「ジックスさん」
忙しそうではあったが、彼は俺に笑みを向けてくれた。しかし、「さん」をつけて呼ばれると、少しこそばゆい。
「…お似合いですよ、スーツ」
「止めてください…。まだ慣れなくて」
困ったように笑うコーディだったが、次の瞬間にはちゃんとCEOとしての顔に戻っていた。
「それで、本日は何の御用件でしょうか?」
言われて、俺は懐から小さな封筒を取り出す。中には、俺の全財産が預けてある口座にアクセスできる、カードキーが入っていた。テーブルの上に置いて、彼の方に滑らせる。
「…これは?」
「俺の、全財産が入っています。これを使って、…タイムウィンドゥを、もう一度作っていただきたいのです」
「…何のために?」
値踏みするようなコーディの視線。俺は言葉に詰まり…、どうせ、全てを手放すのだ。なら、真実を述べよう。そう思った。
「…ドナテロに、もう一度会いたい。それだけです…!」
我ながら、驚くほど声が掠れていた。マントの下で、両の手のひらを固く握りしめる。
以前、コーディは言っていた。タートルズが元の時代に帰るためには、タイムウィンドゥが必要だったと。ならば、それをもう一度作ることが出来たなら。それを使えば、俺はドニーにもう一度会えるのではないか…!?
だからこそ、全財産を金に換えた。何かあれば、協力も惜しまぬつもりだった。こうして誠意を尽くすことしか、今の俺には出来なかったから。
コーディは何も言わぬまま、じっと俺を見つめていたが、やがて表情を崩し、頷いてくれた。
「分かりました。全力を尽くします」
「…あ、ありがとうございます…!」
感謝の意を込めて、俺はコーディに深々と頭を下げた。


その日から、コーディのペントハウスに身を寄せる日々が始まった。
彼は仕事の合間を縫って、タイムウィンドゥの作成に取り掛かってくれた。CEOとしての仕事の他に、俺の頼みも聞いてくれているわけだから、さぞかし疲れも溜まるはずだ。
しかし、コーディはそんな素振りを見せることもなく、楽しそうに作業をしてくれていた。
俺は出来る限りそれを手伝い、足りない材料があれば、すぐさま調達しに出掛ける。どんな危ない橋を渡ってでも。
タイムウィンドゥの作成は困難を極め、起動実験に何度も失敗した。だが、俺もコーディも諦めなかった。絶対に完成させてみせる。そんな強い決意を、俺たちは胸に固めていた。


そして、俺がコーディに依頼をしてから半年。タートルズが元の時代に帰ってから、ちょうど一年が過ぎたころ。

ついに、タイムウィンドゥが完成した。

       *       *       *       *

「本当に、いいの?」
「あぁ」
「もう二度と、こっちの時代には帰ってこられないんだよ?」
「ドニーのいない世界に、未練などないさ」
念を押すような問いに、俺は即答を返す。…実際のところ、この半年の共同生活で、俺とコーディはすっかり打ち解けていた。彼と離れてしまうのは少し寂しい気もするが、仕方ない。
コーディも同じらしく、寂しそうな表情をしていた。が、俺の心が変わらないのを見て取ったのか、一度だけ深く頷き、笑顔になってくれた。
「…うん、分かった」
タイムウィンドゥは、かなり大がかりなものとなっていた。壁際の装置のレバーが下ろされる。少しの間を置いて、目の前の四角いゲートの中に、過去へと繋がるトンネルが現れた。
「時代設定も完璧だよ」
「ありがとう、コーディ。心から感謝している」
すっと右手を差し出すと、コーディもそれに応じてくれた。固く握手を交わし、別れの挨拶の代わりとする。
「俺の船をここに残してしまうことになるが、適当に処分しておいてほしい。…最後まで苦労をかけて済まない」
「大丈夫だよ」
今の俺は、身一つの状態。未来の品は過去には持っていけないから、俺はいつものマントを纏った服装以外に、何も装備していなかった。
「何かあいつらに伝えたいことはないか?」
「あ、それじゃあ…、みんなに、僕は元気だよって伝えて。後…、サーリンに、ごめんね、って」
「分かった、伝えよう。…そうだ、俺からも伝言だ。プレジデントに伝えてくれ。もうあんたの手を煩わせることはない、とな」
「…うん」
いよいよだ。見慣れたこの景色とも、コーディとも、…この時代ともお別れだ。俺は何よりも大切なものを、もう一度この手にするため、時の彼方へ旅立っていく。
「…コーディ、元気でな」
「ジックスもね」
泣き笑いのような表情で、コーディが俺に手を振る。軽く右手を上げ、俺はタイムウィンドゥの中に身を躍らせた。
うねるような時間の流れの中を、泳ぐように進む。やがて、前方に小さく、目的地が見えてきた。それは瞬く間に大きさを増し、俺はぽんと放り投げられるように時間の流れから抜け出し、たたらを踏んだ。
「おっ、と…」
かろうじて、転倒は免れる。振り向くと、すでに時間のトンネルは消えていた。しかしここは何だ? 下水道か?
「……」
本当に、ここにいるのだろうか。とりあえず前に向かって歩き出すと、通路を抜けた先に、広い空間があるのが見えた。物陰に潜みつつ、辺りを見回す。
部屋の中央に、大きなコンピュータ端末が置かれていた。おおよそ、下水道には不似合いなもの。そして、前に置かれた椅子に深々と腰掛けるのは、…俺が、ずっと探し求めていた相手。
彼はキーボードを叩き、システムを立ち上げる。一年ぶりに耳にする声は、少しも変わっていなかった。
「…プログラム、起動。解除ワードは…。」
そこで俺は、耐えきれずに声を上げる。
「…It's Ninja Time。そうだろう?」

―逢いたかった。全てと引き換えてでも、逢いたかった。

「…ドナテロ」

「…えっ?」
ゆっくりと、椅子ごと彼がこちらを向く。紫色のバンダナがふわりと揺れる。信じられないといった面持ちで、彼が俺の名を呟いた。

「…ジッ、クス…?」

そこが、我慢の限界だった。凭れていた壁から離れ、床を蹴って駆け出す。

探して、求めて、焦がれ続けて。遥かな時間を渡って、再び会うことの叶った、心から愛しく想う存在を、俺はようやく、この腕に抱き締めた――

       *       *       *       *

幸せな夢だった。
出来れば永久に、この甘やかな雰囲気に浸っていたいと思えるような。
しかし、俺は静かに目を覚ます。息をつくと、少しずつ身体に意識が行き渡っていく。
まだ、部屋の中は暗い。ベッドに横たわったまま、俺は辺りを見回す。ベッドサイドの時計が示す時刻は、朝の五時を回っている。四角いテーブル、壁際のテレビ…。
…あぁ、俺の部屋だ。ドニーがいる時代の、…俺の部屋だ。
ベッドの上に体を起こすと、隣で眠っているドニーの姿が目に入った。こちらに顔を向け、穏やかな寝息を立てている。
(ドニー)
頬を指先で撫でると、ドニーは少しだけ眉間に皺を寄せる。その様子が愛しくて…、気がつくと、俺の目からは涙がとめどなく溢れ出していた。
「あ、れ…?」
拭っても拭っても、止まってくれない。胸の中に満ちた、得体の知れない、暖かいものが、涙となって流れてくるみたいだ…。
「…ん、ジックス?」
しばらく肩を震わせていると、眠っていたドニーが目を覚ました。俺が泣いているのを見て、驚いた表情になる。
「どうしたのジックス…、何で泣いてるの!?」
「いや、ちょっと、な…」
泣くなんて何年ぶりだろうか。濡れた頬をティッシュで拭うと、やっと涙が止まってくれた。心配そうに体を擦り寄せてきたドニーに、俺は安心させるような笑みを向ける。
「お前と離れていた頃の夢を見ていたんだ」
「夢?」
ドニーの肩を抱いて、俺はとつとつと語りだす。姿を消したドニーを探して、宇宙を何か月も探し回ったこと。トリケラトンの惑星から逃げてきたこと。親しくなれたコーディとのこと。
そして、何度も失敗を重ねた、タイムウィンドゥを作っていた日々のこと。今となっては思い出深い事柄を、俺はドニーに全て話した。
「一年もかかってしまったが、その間、一日たりとも、お前を想わない日はなかったよ」
優しく言うと、ドニーは目をしばたたかせ、…何故か泣き出してしまった。
「ドニー、俺が泣き止んだのに、お前まで泣いてどうする」
「ごっ、ごめん…!」
溢れる雫を拭うと、ドニーは俺の胸に額を押し付けてくる。
「だって、申し訳なくて…」
「何がだ?」
しゃくり上げる声が、新たな涙に濡れる。
「ジックスが、そんなに僕のことを想ってくれてたのに、僕、ジックスのこと、忘れかけてた…!」
「…いいさ。こうして、また会えたんだから…」
そっと腕を回して抱き締めると、ドニーも俺の背に腕を回した。

…もう、何百回と口にした。それでも伝えきれない想いを、俺は改めて言葉にする。

「愛してるよ、ドニー」

するとドニーは、俺と同じように、想いを言葉にして返してくれる。

「僕も大好き…、ほんとに大好きだよ、ジックス…!」

「…ありがとう」

もうすぐ夜が明ける。カーテンの向こうの世界が、少しずつ明るくなっていく。

二度と離さない。離れない。その気持ちは、あの頃から全く変わっていない。

さぁ、過去に別れを告げ、新しい明日へ向かおう。

…二人で、一緒に。








ジックスを泣かせたかったんです

ジックスが泣くなら、それはやっぱりドニー絡みだろうと思って、今回は二人の間にあった一年間の空白期間を書きました。

タイトルは名曲です。直訳は「君と共に旅立とう」ですかね

では
スポンサーサイト

カテゴリ: タートルズSS(ジックスD)

tb: 0   cm: 0

タートルズSS 「He is special. very special.」 (ZD) 

夕飯を終えると、僕はこっそり我が家を抜け出す。
夜の闇に紛れ、ビルの上を飛び回る。ひんやりとした夜気の中、思い切り体を動かすのは、本当に気持ちいい。
そして、程なくして目的地に辿り着く。密やかに階段を昇り、ドアの前でノックを三回。ドアが開くなり、僕は幸せに抱きしめられる。

「…会いたかったよ、ドニー」

「…僕もだよ、ジックス」

いつだって僕を優しく受け止めてくれる、大好きな人の元で。


「本当なら、すぐにでもお前をベッドに押し倒したいんだが…」

僕から手を離し、ジックスは残念そうに肩をすくめる。

「まだ仕事が残っていてな」

「仕事?」

「ああ。カフェの決算業務なんだ。コーヒー豆の仕入れ値やら、今月の売り上げ高なんかを、全部計算しなくてはならないんだ。お前が作ってくれたソフトが、とても使いやすくて、助かっている」

部屋の中に上げてもらうと、部屋の中央に置かれたテーブルの上に、彼のノートパソコンが置かれている。その横には帳簿とかの記録が積まれていて、忙しそうだ。

「すぐに終わらせてしまうから、本でも読んで待っていてくれ」

「分かった」

ジックスはパソコンの前に座り直し、慣れた手つきでキーボードを叩き始める。僕も言われたとおり、彼の部屋にある雑誌に目を通したり、外の景色を眺めたりしていたけど、どうにも手持ち無沙汰だ。
台所の方に目をやると、そこにあるのはカフェにあるのと同じコーヒーメーカー。それを見た瞬間、僕の頭に素晴らしいアイディアがひらめいた。

「ジックス、コーヒー淹れるね」

「すまんな」

いいよ、いつも美味しいコーヒーを淹れてもらってるんだもん、たまには僕がジックスにコーヒーを淹れてあげたいじゃない。
セットされている豆の配合は、ジックスご自慢のスペシャルブレンド。荒挽きになったそれに、別に沸かしたお湯を注いで、待つこと少し。

「えっと…」

ジックスの好みは、角砂糖とミルクのポーションが一つずつ。大きめのマグカップにコーヒーを満たすと、芳醇な香りが部屋に広がる。

「はい、ジックス。お待たせ」

「悪いな、ドニー」

嬉しそうに笑いながら、ジックスは僕の手からカップを受け取り、美味しそうに飲み出す。自分のカップを持って僕がテーブルに戻ると、ジックスは感慨深いといった風情で口を開いた。

「やはり、人に淹れてもらったコーヒーというのは、美味いものだな」

それが、何よりも愛しい存在なら、極上の味わいとなる。そこまで言って、ジックスは満足そうな顔でコーヒーを飲み干してしまう。

(…その極上を、僕はいつも、味わってるんだ…)

そう思うと、急に恥ずかしくなってしまう。赤くなっているのを悟られないよう、僕はカップを傾けて顔を隠した。

「…よし、あと一息だ」

カップを置き、ジックスが再びパソコンに向かう。その真剣な表情を、僕は何となくじっと見つめてみた。

短く刈り揃えた黒髪は、全て後ろに撫で付けてある。時折瞬きをする瞳は、キレイな緑色。
丁寧に整えられたヒゲの中に、さっきのコーヒーで潤った唇。目を離すことが出来ない。…何か、ドキドキしてきちゃった…!
と、僕の視線に気づいたのか、ジックスがパソコンの画面から目を離し、僕の方を見た。

「どうした? ドニー」

「え、あ、いや、その…」

まさか、見とれてたなんて言えない。言葉に詰まる僕を見て、ジックスは含み笑いを漏らす。

「もしかして、俺の顔に見とれていたのか?」

「うっ」

…図星だ。恐らく隠せないだろうとは思っていたけど。
何となく悔しくて、僕はぬるくなってしまったコーヒーを飲み干す。するとジックスが、こんなことを言い出した。

「なぁドニー、お前と付き合いだしてから、どれぐらい経っただろうか?」

「えっ?」

「離れていた時期もあったから、そうだな…、三年? といったところかな」

…それが、一体どうしたんだろう。

「それだけの月日を、側で過ごして来たというのに、お前はまだ、俺の顔に見とれるほど、俺を好きでいてくれているんだな」

嬉しいよ、ありがとう。

甘い言葉を紡がれ、僕の胸は高鳴ってしまう。…彼の言う通り、見慣れたはずの顔に心がときめいてしまうほど、僕はジックスのことを愛しく想っている。

「…じゃあ、ジックスは?」

逆に問いかけてみると、彼はキーボードに置いた指を止め、困ったように視線を巡らし、

「…もう少し待ってくれ」

「…えっ、どういうこと?」

彼は言う。あと少しで仕事が終わるから、そうしたらベッドの中でたっぷりと囁いてやる、と。

「…バカっ」

「おいおい、ひどいな」

はは、と笑いながら、ジックスはラストスパートとばかりにキーを叩く。僕はというと、さっきの一言だけでジックスが僕に寄せる想いの強さが分かってしまって、高鳴り続ける胸を必死に押さえていた。


最初から分かっていたことだけど、やっぱりジックスには勝てそうにない。







突然降りてきたジックスD

タイトルはニックドニーの名言

みんなもっとジックス書いて!ジックス描いて!!

ではっ

カテゴリ: タートルズSS(ジックスD)

tb: 0   cm: 0

タートルズSS 「ドアの向こうに」 (ジックス×ドナテロ) 

これは一体、どういう状況なんだ。
「ドナテロ!開けろ!」
「ドナちゃーん!」
ドアが閉まった部屋の前で、ドナテロの兄弟たち― 確かあれは、レオナルドと、ミケランジェロ、とかいったか…。
その二人が、しきりにドナテロの名を呼びながら、ドアをノックし続けている。確かあそこはドナテロの部屋だったはずだ。はて…?
「…なあ、一体何の騒ぎなんだ?」
半ば呆れながら近づいていくと、ミケランジェロがこちらを向いた。
「あ、ジックス!」
その声に、残り二人の視線もこちらに合わされる。レオナルドからは怪訝な視線、そして残るラファエロから向けられるのは、あからさまな敵意。やれやれ、何とかならんものか…。
「あのね、ドナちゃんがね、発明に行き詰まって、部屋に閉じこもっちゃったんだ。」
ミケランジェロの説明に、俺は半眼になる。
「…それは、よくある事なのか?」
「んー、久しぶり、かなぁ…。そんでオイラたち、どうにかドナちゃんに出てきてほしくて、こうやって呼んでるんだけど…。」
…なるほど、出てこないのか。これだけの呼びかけにも答えないとは、よっぽど荒れているのか、それとも…。
俺とミケランジェロが話している間にも、レオナルドとラファエロが呼びかけを続けている。しかし、ドナテロは一向に出てくる気配がない。
「…ふむ、では俺もやってみよう」
二人に下がってもらい、俺はぴったり閉められたドアと向かい合う。そして大きく息を吸い込み、
「ドナテロ! お前に会いに来た! もし聞こえているなら、ドアを開けてくれ!」
フロア全体に響き渡るくらいの声で、そう言い放った。
「…はっ、そんなんでドナテロが出てくるわけ…」
ラファエロが嘲るような口調で言った直後だった。
何と、兄弟たちがあれだけ呼んでもけして開かなかったドアが、内側からゆっくりと開いたのである。
「ドナテロ!」
「…ぁ、ジックス…」
ふらふらしながら出てきたドナテロを、俺は咄嗟に抱きとめる。両目の下にクマが出来ている。どれだけ寝ていないのか…。
「とにかく、風呂に入って休め。ほら…。」
しっかりと肩を抱き、俺はドナテロをバスルームへと連れて行く。バンダナや腰紐を外してやり、彼をシャワーカーテンの向こうへと送り出す。
程なくして、シャワーの水音が聞こえてきた。大きめのバスタオルを用意しておき、待つこと数分。
「ふはー…。」
キレイに体を洗って出てきたドナテロを、俺はバスタオルですっぽりとくるみ、抱きしめる。
「…大丈夫か?」
「うん…。」
体が温まったせいか、ドナテロは早くも眠そうな顔になっている。やむなく、俺はドナテロの体を両腕で抱え上げ、バスルームを後にする。
リビングに戻ると、心配そうにこちらを見ていた三人と目が合った。俺は一瞬だけ考え、一番話が通じそうなレオナルドを選び、声をかけた。
「…レオナルド、ドナテロに何か冷たい飲み物を飲ませてやりたい。何かないだろうか?」
俺の申し出に、レオナルドは少し考え込み、
「…分かった、用意する。」
と答えてくれた。
「…済まんな」
踵を返したレオナルドにそれだけ言い、俺はドナテロを部屋へと連れて行った。そっとベッドに座らせると、タイミングよくレオナルドが飲み物を持ってきてくれた。
「恩に着る。」
ドナテロの隣に座った俺は、レオナルドから受け取ったボトルの蓋を開け、ドナテロに手渡す。
「ほら、ゆっくり飲め。急がなくていいから…。」
「ん…。」
ぽやんとした目で、ドナテロはゆっくりと飲み物を嚥下していく。喉の鳴る音が聞こえ、俺はほっと胸を撫で下ろした。ひとまずは安心か…。
「…ドナテロ。」
飲み物のボトルに蓋をし、俺は彼の肩を抱く。
「確かに、お前は天才だ。機械に関することなら、修理も発明もお手の物だろう。だがな…。」
そこで言葉を切り、俺は肩に置いた手を、ドナテロの頭へと動かす。
「忘れるな。そんなお前を、いつも心配してくれる存在がいることを。もちろん、俺がその筆頭だ。頑張るのは結構だが、無理は誰のためにもならん。いいな?」
「…うん。ありがと、ジックス…。」
眠りに落ちる寸前の、ふわふわした口調。俺はドナテロにそっと口付け、彼の体をベッドに横たえた。
「…お休み、ドニー。今晩はずっと側にいてやるから、安心して寝ろ。」
「……。」
返事はなく、代わりに穏やかな寝息が聞こえてくる。余程疲れていたのだろう、いつもより遥かに早いスピードで、ドナテロはもう夢の中だ。
俺は音を立てないようにその場を離れ、部屋から出たところでふっと息をつく。と、それを待ちかねたかのように、兄弟たち三人が俺を見てきた。
「ドナテロは寝たぞ。恐らく朝まで起きないだろう。」
俺が言うと、明らかにほっとした様子で、レオナルドがため息をついた。
「それにしてもさぁ、ドナちゃん、オイラたちがあんなに呼んでも出てこなかったのに、何でジックスが呼ぶと一発で出てきたんだろうねー。」
「あぁ、それはアレだ。腕前だ、腕前。」
ぼやくミケランジェロに軽口を返すと、ラファエロの視線が険のある物へと変わる。
「…冗談はさておき、今夜は俺もここに泊まらせてもらおう。何せ、今夜は一緒にいると約束してしまったからな。じゃ、お休み。」
一気に言って、唖然とする三人を置き去りにし、俺はドナテロの部屋へと戻った。ドアをしっかりと閉め、カギもかけてしまう。これで邪魔は入らない…。
とは言っても、襲うつもりは毛頭ない。一緒のベッドで寝るぐらい、許してくれるだろう。
俺はドナテロの枕元に立ち、すやすやと眠っている彼の額にキスを落とした。


お休み、ドニー。

起きたらスペシャルブレンドが待っている。








ご無沙汰してました 

昨夜寝る前に降りてきたジックスDです よろしければどうぞ

ラフ受けフェスが終わったので、これからはジックスD+えいべい強化月間です
こことか支部とかがもろもろ動くと思います

では、今日はこの辺で。

カテゴリ: タートルズSS(ジックスD)

tb: 0   cm: 0

タートルズSS 「I'll be there for you」 (ZD、擬人化、裏) 

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

カテゴリ: タートルズSS(ジックスD)

tb: --    cm: --

タートルズSS 「Welcome to Kona Wind」 (ジックス×ドニー、擬人化) 

(註:このSSは、亀サイト「special+spec-f」様の擬人化設定をお借りしています。あと、ドニーががっつり女装しています。そういうのが苦手な方は、閲覧をご遠慮ください。)








朝起きると目の前に、人間の姿になったドナテロがいた。
(…あぁ、またか。)
さすがに、二度目ともなると慣れる。俺はベッドの上に体を起こし、細い肩を揺らす。
「…ドナテロ、起きろ。」
「んー…。」
少し揺らすと、彼は眉間に皺を寄せ、目を擦る。
「…あ、おはようジックス。って、あれ…?」
ようやく自分の姿が変わっていることに気づいたのか、ドナテロは自分の両手をしげしげと見回し、はは、と力なく笑いを浮かべた。
「…また、だね…。ごめんジックス、驚いたでしょ。」
頭をかくドナテロに、大丈夫だ、と告げ、額にキスを一つ。
「ジックス…?」
「まだ眠気が残っているだろう? 今日はゆっくりしていてくれ。」
本当なら、まだ彼とベッドの中で時を過ごしたい。しかし、今日は店を開けなければならない。盛大に後ろ髪を引かれながら、俺は身支度を整えた。
が、着替える段階で、俺はふとある事を思いつく。振り向いた俺は、素晴らしいくらいの笑顔だったに違いない。
「ドナテロ、今日一日、アルバイトしないか?」


「な、何だよコレ…。」
店のバックヤードから出てきた彼の姿に、俺は目を細めた。
今日のドナテロは、紺色の丈の長いワンピースに、ふわりとした白いエプロン。真っ白なソックスに、黒の靴。古風なメイド姿に、足の方まである、緑色のさらさらの髪が揺れる。今日はポニーテールではなく、普通に髪を下ろさせている。
そして、レースのたっぷりついた真っ白なヘッドドレスをつけてやると、彼はさらにしとやかな姿となった。
「紫色でなくて申し訳ないが、よく似合っているぞ、ドナテロ。」
「いや、そういうことじゃなくてさ…。」
「誉めているんだぞ?」
ウィンクをすると、ドナテロは顔をぽっと赤らめる。俺は笑いながら、固く絞った布巾を手渡した。
「さぁ、開店準備だ。俺はカウンターを拭くから、お前はテーブル席の方を拭いてくれないか?」
「…う、分かった。」
まだ納得していないような様子だが、ドナテロは俺の指示を受けて動き始める。その間に、俺は届いた品物のチェックをし、レジへの配金を済ませる。
「終わったよ、ジックス。」
「あぁ、ありがとう。さ、店を開けるぞ。」
ドアにかかる札を、「OPEN」にすると、程なくして初老の男性が入ってきた。彼はここの常連で、いつも開店してすぐに来てくれるのだ。
「おはようございます。」
「やぁ、おはようジックスさん! 今日も美味いコーヒーを頼むな!」
「お任せ下さい。」
常連ということもあり、彼がいつも頼むメニューは把握している。さっそくコーヒーを淹れにかかると、彼は目ざとくドナテロを見つけたようだ。
「お! あの子は何だい?」
やはり少し恥ずかしいのか、ドナテロはこちらに背を向けて作業をしている。そんな彼の背に、俺は声を投げた。
「あぁ、私の恋人です。普段はあまり店には来ないんですが、今日は特別にアルバイトをしてもらっているんです。」
「へー! そうなのかい! いやージックスさんも隅に置けないねぇ!」
出したコーヒーを傾けながら、男性は興味深そうな視線を注いでいる。…俺から見ると、髪の毛に隠れた首筋が、見る見るうちに赤く染まっていっているのが分かる。
「ちょっと、ご挨拶したいねぇ。」
「いえ、それはご勘弁ください。その、とても恥ずかしがりやなものですから…。」
「そうなのかい。まぁ、無理強いはしないよ。」
その後、未だに後ろを向いたままのドナテロに、ジックスさんをよろしくね、と声を掛けて、男性は店を後にする。ドアベルの音が鳴り終わると同時に、ドナテロは真っ赤な顔で振り向いた。
「じ、ジックス! 何て説明してんのさ!!」
「…何、とは?」
こちらに食って掛かるドナテロに、私はカップを拭きながら平然と答える。
「ぼ、僕のこと、こっ…!」
彼はそこで言葉に詰まる。…あぁ、先ほどの男性に「恋人だ」と紹介したのが、そんなに恥ずかしかったか。
「ドナテロ、お前は俺の何だ?」
「えっ…?」
「恋人、ではないのか? 違うのか?」
彼は返答に困り、しばし視線を彷徨わせ、やがて観念したようにぽつりと呟く。
「…違わ、ない。」
「そうだろう? なら、恋人だと紹介しても、何の問題もないじゃないか。」
「…う、それは、そうなんだけどさぁ…。」
ドナテロが照れて、体の前で指を捩らせるたびに、白いエプロンにドレープが出来て微かに揺れる。
「…は、恥ずかしいじゃないか…。」

…あぁ。

その、真っ赤に染まった表情もまた。

「…愛しているよ、ドニー。」
「っ…!」
思わずこぼれ出た想いに、ドナテロはさらに顔を朱に染める。
「…も、もういいっ。」
拗ねたのか、ドナテロは完全にそっぽを向いてしまう。そんな様子がおかしくて、俺は肩を震わせて笑い続けた。


その後、一時間もすると、ドナテロは衣装にも働くことにも慣れてきたようで、自分から積極的に動くようになってきた。
その日は、ドナテロのおかげもあってか、結構な売り上げだった。
閉店後、掃除を済ませると、一気に疲れが襲ってくる。カウンターのいつもの席に突っ伏すドナテロを見ながら、俺はレジの精算をする。
「お行儀が悪いぞ、ドナテロ。」
「だって、実際にこうやって働いたことなんて、初めてだったから…。」
「仕方ないな…。」
俺は今日の分の売り上げから、紙幣を数枚抜き、細い封筒に入れて彼の前に差し出す。
「…え? これ、何?」
「今日のバイト代だ。…よく働いてくれたからな。ありがとう。」
「…も、もらっちゃって、いいの?」
「当然の報酬だ。」
ドナテロは少しとまどいながらも、俺から封筒を受け取り、嬉しそうに微笑む。続けて、淹れたてのスペシャルブレンドを置いてやると、ドナテロの顔はさらに明るくなった。
「わぁ、嬉しい…!」
さっそく、ドナテロはコーヒーに口を付ける。ほっとした吐息が漏れたところで、俺はカウンターから出た。
「…ドナテロ、ちょっと立ってくれ。」
「何?」
言われた通り立ち上がるドナテロを、俺は両手を広げて抱きしめる。
「えっ、ジックス!?」
「…今日はありがとう、ドナテロ。感謝している。」
髪の毛の中に指を滑り込ませ、さらりと撫でる。ちらりと見えたうなじが、目に眩しい。
「以前から思っていたんだが、お前の髪は太ももの辺りまであるんだな。…とてもキレイだ。」
「あ…。」
手のひらを頭から頬へと滑らせると、ドナテロの紅潮した頬が視界いっぱいに広がる。今日一日の働きを労うように、俺はドナテロにそっと口付けた。


疲れたら、ここへ来るといい。

カフェ「Kona Wind」。ちょっと不思議な雰囲気のマスターと、可愛らしいロングヘアのメイドが、あなたを待っている。








今年最後の更新は、ジックスDになりました。設定をお借りするにあたり、快諾を下さったT様、本当にありがとうございました。


皆さま、今年もありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。

蒼木るり

カテゴリ: タートルズSS(ジックスD)

tb: 0   cm: 0

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。